法人販社網の整備が懸案
KDDI(小野寺正会長兼社長)が新サービスで法人事業の拡大に乗り出した。第一弾としてFMC(移動体通信と有線通信の融合)サービス「ビジネスコールダイレクト(BCD)」を4月から提供開始する。このほかにも、マイクロソフトのシステム基盤「.NETフレームワーク」で開発したアプリケーションを携帯電話「au」で動かせる「.net by au」の提供などにより、法人顧客を増やす方針だ。これらの施策で新規顧客として中堅・中小企業(SMB)を増加させるとしているが、法人開拓に実績のない同社がどこまでやれるのかは未知数なところがある。
4月に提供開始の「BCD」は、ユーザー企業が「au」を外出先で携帯電話、社内で内線電話として使える。導入を促す“売り文句”は固定電話と携帯電話間の「通信料削減」だ。
こうした“売り文句”でSMBを中心に幅広い層のユーザー獲得を狙う。しかし、「KDDIブランド」の「固定電話と携帯電話を導入すれば料金が安くなる」というキャッチフレーズだけでは、ほかの通信事業者と代わり映えしない。そこで、KDDIが前面に押し出すのが「アプリケーションサービスの充実でソリューション提供を拡大させる」(山本泰英・ソリューション事業統括本部FMC事業本部FMC推進本部長)こと。「BCD」の提供に合わせてアプリケーション開発用途に「.net by au」を積極的に展開する手はずだ。
「.net by au」とは、マイクロソフトの「.NETフレームワーク」を「au」用のアプリケーション開発にも活用できるプラットフォームとする仕組みだ。この先、「独立系ソフトウェアベンダー(ISV)とのアライアンスを加速させる」(同)と話して、普及図る。現状では、協業するISV数は明らかにしていない。
だが、「当社が進めるSaaSビジネスとも関連させ、できるだけ多くのISVと親交を深める」(同)と、「BCD」アプリケーションを近くSaaS提供にも拡大する方針。サービス開始を機に、4月には新規顧客を開拓する新組織を設置する計画だ。
今回、「BCD」を手始めに法人事業に切り込む施策を打ち出したのは「ほかの事業者と比べて法人顧客が少ないため」と、山本本部長は実状を吐露する。これまでに、法人顧客向けで獲得できたのは大規模プロジェクトが中心だ。これでは契約者増に直結しにくいため、SMBへ矛先を向けたわけだが、課題は販路の開拓。販社は「現段階で(リセラーを含め)900社と多い」と自信をみせるが、大半は携帯電話や光通信を販売する個人向け事業者。企業の業務に応じたシステム提案ができる販社は少なく、いまだSMB開拓が実現していない。
KDDIがマイクロソフトや同社の販社網を使って「販路拡大」とするならうなずけるが、現状のままでは法人開拓は厳しいといえる。(佐相彰彦)