ネット検疫など需要増か？

　昨年1年間でUSBメモリなどの外部メディアを経由したウイルス感染被害が急増した。パソコンのぜい弱性を狙って感染するウイルス「Confiker（コンフィッカー）」が猛威をふるっているほか、外部メディアにも感染できる機能が付加された亜種も出ている。マイクロソフトは修正パッチを配布し、セキュリティ各社もツールなどを提供し対応に奔走している。システムの盲点を突かれた被害で、今後の予防策として「ネットワーク検疫」といったセキュリティ製品が需要を伸ばすことが考えられる。　USBメモリ経由によるウイルス感染が急増していることから、セキュリティ製品ベンダー各社は注意を喚起している。ソフォスの「セキュリティ脅威レポート2009」によれば、「2008年には国際宇宙ステーションのコンピュータがUSB経由でウイルス感染した」と、本来堅牢であるはずのシステムにまで被害が拡大している。

　特に、爆発的に感染が広がっているのが「コンフィッカー」。マイクロソフトが同ウイルス作成者の情報提供者に「懸賞金を出す」と発表したほどだ。トレンドマイクロの「Internet Threat Report」掲載の09年2月の脅威レポートでは、OSのぜい弱性を狙って「辞書攻撃（パスワードやメールアドレスなどを探る手段）」を行い、共有ネットワークを介した感染や外部メディアを媒介にできる亜種が登場したことも報告されている。

　コンピュータ内のウイルスを駆除してもUSBメモリに感染する機能で、コンピュータへ再感染が起こるほど威力が強く「今後はシステム内部に入り込み、情報漏えいをさせるような機能の出現などによる二次被害も予想される」と、トレンドマイクロでは強く警戒を呼びかける。

　セキュリティ各社では、USBメモリ経由での感染に対し、マイクロソフトが配布している修正パッチやセキュリティツールを使った駆除を勧めている。ソフォスには「数社のユーザー企業から問い合わせがきた」という。だが、こうしたユーザー企業に対し、ネットワークアクセス管理製品などのセキュリティ製品を、すぐに提案できるかというとそうでもなさそうだ。「現在は感染した箇所を完全にクリーニングすることが困難で、対応に追われている状況。予防策にまで手が回っていない」（ソフォス）と、被害修復に追われていると実状を訴える。

　とある医療機関で「職員がUSBメモリにデータを入れて持ち帰り、自宅で仕事をした際に感染した」との相談を受け、セキュリティ機能付きの専用USBメモリを導入する。医療機関では同様の勤務形態のところが多いため、他の医療機関にも呼び掛ける方針だ。まずは駆除対策が必要だが、今後の予防策としてネットワーク検疫（NAC）などの製品を提案して、新たな販路を開拓することが考えられる。（鍋島蓉子）