戦略選定50社と“蜜月”に
デル(ジム・メリット社長)が水面下で販社網の構築、間接販売体制の整備を着々と進めている。直販で成長したデルは、1年半ほど前にグローバルで間接販売を強化する方針を策定。直販と間接販売を併用する戦略に大きく舵を切った。日本もその流れに沿い、07年秋から準備を進めてきた。国内販社網構築の基本戦略は、“ひろくあまねく”販社を募集するのではない。デルが協業したいと考えているITベンダーを厳選し、それらのベンダーに向けて個別にパートナー契約を結ぶ手法だ。選んだITベンダー数は50社。すでに4社のベンダーとパートナー契約を結んだ。

デルが間接販売網構築に本格的に乗り出したのは2007年秋。米本社のCEOにマイケル・デル氏が復帰した直後に打ち出した間接販売強化戦略がきっかけだ。日本法人もその戦略に沿い同時期に動き出した。直販に加え、PCやサーバー、ストレージをSIerなどのITベンダーを通じて間接的にユーザー企業に販売する──。そんな国産コンピュータメーカー勢の“お家芸”といえる仕組み作りに本腰を入れ始めたわけだ。
準備室という形で約1年間は調査・分析作業に時間を割き、昨年9月に満を持して、販社となるパートナーのリクルートと支援プログラム策定役を担う「パートナー統括本部」を設置した。同統括本部のキーパーソンは、福角和薫副本部長業務統括担当と、小林広高副本部長営業統括担当。福角氏がパートナーへの支援内容や優遇制度などを立案し、小林氏がパートナー獲得のための提案・営業活動を担当する二人三脚体制だ。福角氏はデル在籍13年のキャリアを持ち、一方小林氏はEMCジャパンから昨年デルに移籍した。
パートナー獲得のための戦略としては、パートナー制度を大々的にアピールして販社を広範に募集する“オープン”な方法はとらない。デルがパートナー契約を結びたいITベンダーを選定し、それらベンダーに向けて個別にアプローチする“クローズ”な手法をとったのだ。具体的には、SIerなど50社を選び出して昨秋からリクルート活動を開始している。すでに「4社のITベンダーとパートナー契約を結んだ」(小林氏)が、デルは具体的なパートナー企業名を明かさない。

パートナープログラムの内容は非公開だが、直販とパートナーの営業担当者レベルで案件衝突が起きない仕組みをWeb上に整えたり、リベート内容がひと目で把握できるようにしたりと、「シンプルなつくりを重視している」(福角氏)という。
福角氏は、クローズ戦略の理由についてこう話す。「デルは最後発でパートナービジネスを始めた新参者。いきなり手広くやれば、パートナーに迷惑をかけかねないと考えている。(間接販売網の構築・運用について)勉強する、ノウハウを蓄積するという意味もあり、まずは限定して動くのが適切と判断した」。今後のパートナー契約数についても「四半期ごとに4社程獲得できれば。まずは選定した50社に対しての提案を積極化させる。これら50社以外の企業にアプローチするつもりは現時点ではない」と小林氏は説明。あくまで慎重だ。
“オープン”な戦略ではないだけにあまり明るみに出ないが、デルは水面下で販社網作りに着々と動き始め、虎視眈々とパートナービジネス拡大を目論んでいることは確かだ。(木村剛士)