アプリ提供でSOHOやSMBを開拓

法人向けにレンタルサーバーサービスなどを提供するKDDIウェブコミュニケーションズ(山瀬明宏社長)が、オンラインのホームページ作成サービスに乗り出した。2009年3月25日から個人向けに無料で提供、独自ドメインが持てる有料サービスでも月額945円と低価格に設定した。安さを売りにして、ホームページ作成で頭を悩ませている中小企業を開拓する方針だ。同社がアプリケーションサービスにまで網羅した事業を手がけるのは、主力のホスティング事業を拡充するため。相乗効果を見い出すことで、近く訪れるといわれるクラウドコンピューティング時代に備える。
同社がオンラインのホームページ作成サービスを開始することができたのは、独Jimdo GmbHと業務提携を果たしたため。Jimdo社が開発した同サービスを日本市場で独占的に提供する契約を結んだ。KDDIウェブコミュニケーションズは、「Jimdo(ジンドゥー)」の日本語版を3月25日から提供開始。無料サービスを基本に、独自ドメインなどが持てる月額945円の有料サービスを用意している。
このサービスを開始したのは、「日本は欧米に比べて、ホームページ作成で遅れをとっている」(山瀬社長)状況を打開する狙いがあるからだ。ドイツでは登録ドメイン数が1200万に達しているのに対し、日本はわずか100万。これは、「ホームページの作成は難しいと判断している人が多い」ためだ。「Jimdo」を広めることによって、「ツールに対する知識がなくても使えるという環境を提供していく」考えを示している。
「Jimdo」の特徴は、ホームページとして実際に配信している完成画面と編集画面が同一のインタフェースであることだ。そのため、ユーザーは編集したい部分をクリックすることで、直感的に更新できるという。今までホームぺージ作成に必要だった「HTML」や「CSS」などの専門知識を必要としない。「簡単に素早く、しかもクオリティの高いホームページを作成できる」とアピールする。同社は、初年度(2010年3月期)に30万アカウント数、7300万円の売上高を狙っている。
メインユーザーとして想定しているのは個人だが、「有料サービスの対象は個人事業主」としている。つまり、収益モデルとして描いているのはSOHOやSMBなどということだ。そのため、「今年中をめどに5~20人規模の企業を対象としたサービスの開始も計画している」という。
有料サービスでユーザー企業を確保しようとしているのは、ホスティング事業のサービス拡充を図ろうとしているからだ。「将来的には、業務アプリのSaaS化など法人に特化したサービスも視野に入れる」。単なる“情報システムのお守り”ではなく、「インターネットの活用でビジネスを成功に導く支援を行う」としている。また、同社のパートナーはウェブ制作事業者が中心で、こうしたベンダーとのパートナーシップ深耕も狙っているようだ。(佐相彰彦)