シスコシステムズ(エザード・オーバービーク社長兼CEO)は、サーバーとネットワーク、ストレージを網羅したプラットフォームの統合化に踏み切った。今年後半には、「ユニファイドコンピューティングシステム」という名称で統合プラットフォームの提供を開始する。ネットワーク機器の最大手メーカーがサーバーを投入するとあって、サーバー市場に一石を投じることになりそうだ。ただ、課題は「どう売るか」。SIとNIの両方を手がける販社をいかに獲得できるかが、カギを握ることになる。
SIとNIが可能な販社を獲得できるか

2009年4月7日、シスコは「ユニファイドコンピューティングシステムについて」と題した記者会見を実施した。内容は、サーバーとネットワーク、ストレージ、仮想化を一つのプラットフォーム統合するアーキテクチャを提供するというもの。以前から「サーバーを投入する」と掲げていたシスコが具体的な内容を説明するとあって、業界では大きな話題を呼んだ。
「ユニファイドコンピューティングシステム」の提供で印象的なのは、さまざまな分野でトップレベルのベンダーがパートナーとして名乗をあげたことだ。例えば、サーバーCPUのインテル、ストレージ専業メーカーのEMCジャパン、仮想化でヴイエムウェアやマイクロソフトなどだ。販社では、伊藤忠テクノソリューションズやネットワンシステムズ、日本ユニシスなどが名を連ねる。こうした有力企業をパートナーとして確保し、今後はサーバーを含めたビジネスを手がけていくことになる。国内サーバー市場は、さらに競争が激化することは間違いない。
では、ネットワーク機器の最大手メーカーが、なぜサーバー領域に参入することになったのか。オーバービーク社長は、「他社のサーバーは、アーキテクチャが全く変わっていない。(当社は)ネットワークサイドからサーバーをインフラの一部として提供していく」と説明する。つまり、ITシステムを導入する企業にとって、サーバーとネットワークを網羅したインフラがポイントになるということだ。「サーバーはアーキテクチャの一つに過ぎない。ベンダーは、それを考えたソリューションを提供しなければならない」としている。
同社が「ユニファイドコンピューティングシステム」の核となる対象ユーザーと想定しているのは、データーセンター(DC)だ。「まずは、大規模なDCから攻めていく。次のステップとして、中規模のDCを開拓していく」と戦略を語る。
サーバーとネットワークを統合した製品・サービスは、これまでありそうでなかった。とくに、販社にとっては、サーバーを中心としたITシステムとスイッチやルータを中心としたネットワークインフラを提供することは難しかった。こうした事情が背景にあって、「SIer」や「NIer」という分類が存在しているといえる。シスコが提供しようとしている「ユニファイドコンピューティングシステム」は、SIとNIの両方を手がけることができるベンダーを販社として確保しなければならないということだ。平井康文・副社長(エンタープライズ&コマーシャル事業)は、「販売パートナーとの関係を一段と深めなければならない」と肝に銘じている。シスコが打ち出したビジネスモデルは、SI業界とNI業界を変革するものとなろう。(佐相彰彦)