市場がまだ形づくられていないなどの理由で、ITを活用したBtoBに特化したマーケティングシステムを提供するITメーカーやSIerは少ないといわれている。そんななか、アイアンドディー(I&D、福重広文社長)がSaaS型リード管理システム「Dr.Marketing」を核とした総合マーケィングサービス「曼荼羅マーケティング」の提供を開始した。注目すべきは、ITベンダーとのアライアンスでSFAなど業務アプリケーションとの連携を視野に入れていることだ。

BtoB企業向け「曼荼羅マーケティング」は、2008年から提供を開始した「Dr.Marketing」と、主力事業のマーケティング関連アウトソーシングサービスを統合したものだ。具体的には、マーケティング担当者が行う顧客情報の面倒な入力作業や、DM発送、メール配信など、リアルでユーザー企業のマーケティング活動を支援することに加え、システムにより顧客に向けてのリードを一元管理するサービスとなっている。
このサービスを提供することになった背景には、「Dr.Marketing」のユーザー企業を増やす狙いがある。現段階で獲得したユーザー企業数はテスト導入を中心に5社。一方、マーケティング関連のアウトソーシングサービスはITや製造などの大手メーカーを中心にして、多くの企業をユーザーとして獲得している。「当社のサービスを組み合わせれば、マーケティング担当者が抱える課題をワンストップで解決できる」(福重社長)。まずは、アウトソーシングサービスで獲得したユーザー企業に対し、付加価値サービスとしてアプローチをかけていく。1年間で20社の獲得を狙っている。
同社がリード管理システムに需要があると睨んだのは、ITベンダーの視点として「BtoBマーケティング向けシステムを開発しても市場が小さいと認識している」ためだ。ニッチな市場であることからユーザー企業を増やすことが難しく、多くのITベンダーはSFAやCRMなど営業担当者向けのシステムを開発したほうが収益を伸ばせると判断しているからだという。確かに、メーカーやSIerでマーケティングに特化したシステムやサービスを提供しているケースは少ないのが実状だ。ただ、「今後は、BtoB企業は営業力で顧客を探していくだけではなく、マーケティング活動によって需要を掘り起こしていくことが求められる。そのためには、営業とマーケティングが連携できるような仕組みが必要」とアピールする。そのためのサービスになるというわけだ。
また、ITベンダーの業務アプリケーションと連携する点はBtoBマーケティングサービスの需要を掘り起こすカギといえる。直近では、日本オラクルのSaaS型CRM「Oracle CRM OnDemand」との連携を計画している。メーカー製品を担ぐSIerにとっては、自社が主力に据えるシステムと組み合わせて提供する可能性があることになる。(佐相彰彦)