販売系SIerの体制変更が相次いでいる。JBCCホールディングスは、今年度に入って中堅SIerやISVのグループ化を矢継ぎ早に発表。富士通ビジネスシステム(FJB)は富士通本体の完全子会社になるのに伴い、上場廃止になる見込みだ。情報サービス産業全体が不況のダメージを受けるなか、ハードウェアなどの製品販売は落ち込みが特に激しい。販売系SIerは製品販売を柱の一つとしており、今の“製品販売低迷”の直撃を受ける。体制一新で苦境を乗り切ろうと必死だ。
体制一新で苦境乗り切る
今回、富士通の完全子会社になるFJBはここ数年、業績が伸び悩む傾向にあった。今期(2010年3月期)は連結売上高で前年度比7.9%減、営業利益で15.8%減の見通しを示すなど、苦戦。上場廃止になっても、富士通本体と一体的な動きをすることで乗り切る選択肢を選んだ。富士通はサーバーなど自社製品のシェア拡大をトップダウンで推進しており、今回の再編もその一環とみられる。
対するJBCCグループは、日本IBMのトップソリューションプロバイダであるものの、富士通とFJBのような一体的な関係にはない。JBCCグループは明確な後ろ盾がないなか、独自で活路を切り開いていくことが求められる。そこで打ち出したのが、グループの再編と積極的なM&A戦略だ。GoogleやSalesforceなどSaaS・クラウド型のビジネスを得意とするゼネラル・ビジネス・サービス(GBS)のグループ化を4月に発表したのに続き、5月には老舗の国産生産管理システムベンダーであるリード・レックスのグループ化を明らかにした。逆風下で「ただ待っていても何も始まらない」(石黒和義社長)と、攻めの姿勢を貫く。
同時に大企業向けのビジネスはJBエンタープライズに集約し、中堅向けはJBCCなどグループ各社が担うなどの再編を急ピッチで進める。これにGBSやリード・レックスが新たに加わることで、これまで弱かったSaaS・クラウドビジネスや生産管理系のERPの補完が期待できる。リード・レックスについては、これまで築いてきた独自の販売チャネルもあるため、「当面は独立性を尊重」(同)し、JBグループは裏方に徹する。JBCCグループはリード・レックスの有力な販売パートナーの1社であり、今回のM&Aは販社がソフトメーカーを傘下に収める構図である。GBSはクラウドに強いというだけでなく、「日本IBMと非常に近い関係」(同)にあることから、IBMとの連携ビジネスの強化にも役立つと判断した。
JBCCグループの業績はFJB同様に厳しいものがある。昨年度(09年3月期)の減収減益に続き、今期も連結売上高はほぼ横ばい、営業利益は前年度比4.8%減の見込み。ここ数年来“年商1000億円プレーヤー”を目指してきたJBCCグループだが、今期の年商1000億円超えも難しい見通しだ。FJBは富士通と一体的になるため、今後の業績は見えにくくなる。中堅企業向けのビジネスを中心に「この分野を伸ばす」(鈴木國明社長)方針。独立経営で臨むJBCCグループと、富士通との一体的な運用の道を選んだFJB。手法はそれぞれ異なるが、不況を乗り切る新体制へと大きく舵を切った点では共通している。(安藤章司)