株式交換による完全子会社化で
富士通(野副州旦社長)は、連結子会社の富士通ビジネスシステム(FJB、鈴木國明社長)を完全子会社化する。富士通グループ内で中堅市場(年商300億円以下のユーザー企業)向けに事業展開する全国のSE子会社などの要員を集約。10月1日には、「新生FJB」として生まれ変わる。同じユーザー企業に対し、「富士通の冠」を掲げるSIerがコンペティション(競合)する営業の非効率性をなくすことなどが狙い。富士通グループの再編は、2004年の前社長体制の下から本格化。FJBへの中堅市場・一本化もその一環だが、個々に独自ソリューションをもつSE子会社の再編は一筋縄ではいかない面がある。
富士通は5月21日、持株比率52.55%の連結子会社であるFJBを、株式交換により完全子会社化すると発表した。緊急会見として会見当日の午前10時に本紙編集部に案内メールが届いた時点では、上場企業で保守会社の富士通エフサス(当時は富士通サポートアンドサービス=Fsas)を吸収し、全グループの仕組みに組み込んだ例を踏襲すると予想していた。しかし、実際は富士通グループの「中堅市場向けテクノロジーソリューション」を担う中核会社としてFJBが「飛躍」する方向性であることが告げられた。
10月1日の「新生FJB」立ち上げまでには、グループ内の中堅部隊を順次集約する。具体的には富士通本体や地域SE子会社の営業機能を東名阪地区から一本化を開始するという。これに加えて、中堅向けERP「GLOVIA smart」ブランドをFJBに移管、商品・サービスの企画・販売促進・デリバリ機能も集約する。中堅市場向けで富士通グループと連携する富士通系列の独立系SIerなどパートナーは、FJBの指揮・管理の元で事業展開する。
富士通の広西光一副社長は「中堅企業の現場をよく知るFJBに任せたほうが、富士通本体がやるより“売れる”材料をパートナーに提供できる」と、完全子会社化の理由を説明。FJBの鈴木社長は「富士通本体と当社との役割分担が不明確だった」と、非効率であったことを認める。
富士通の再編が本格化したのは、黒川博昭・前社長体制下の04年頃。九州や四国などで複数の地域SE子会社が次々と経営統合した。しかし、当時取材した役員の意向とは裏腹に、再編の進捗は遅れている。SE子会社は地域に応じた独自ソリューションを展開し、「独立心」が強い。あるSE子会社幹部は、「富士通本体が“武器・弾薬”を供給してくれないから、自活するためにそうしてきた」と、本体の意向とはいえ、そう簡単に人員をFJBに異動させるかどうかは疑問だ。
広西副社長は、「再編は一段落したのか」との質問に、「Fsasと富士通FIPをどうするかだ」と、意味深なコメントを残したが、これも気になるところである。(谷畑良胤)