自社ノウハウ・知的財産を開放

マイクロソフト(樋口泰行社長)は、SI事業を手がけるITベンダー向けの新サービス「Services Ready」を7月1日に販売する。これまで自社で培ったサービスのノウハウや知識、IP(知的財産権)をソリューションのシナリオごとにまとめたドキュメントをパートナーに開放、それを活用したトレーニングサービスも提供する。対象とするのは中堅のSIerだ。
「SIerの悩みを解決するための具体的ソリューション」。サービス事業を統括する鳴坂仁志執行役は、懇談形式の記者発表会でこう表現し、新サービスを紹介した。
鳴坂執行役は、SIを手がけるITベンダーの課題や要望として、(1)営業の効率化(2)効率的な人材育成(3)付加価値ソリューションの開発(4)工期の精度向上(5)SIを安心して手がけるための設計情報──などと分析した。「Services Ready」は、SIerのこうした課題を解決するために、マイクロソフトが自社保有する知識・ノウハウを開放したサービスというのが謳い文句だ。

マイクロソフトには、ユーザー企業やパートナーに対してコンサルティングなどを手がけるサービス部門がある。このチームのノウハウ・知識を集め、全世界に点在する他国のエンジニアの意見を取り入れたのが今回の「Services Ready」だ。これまでの自社実績をもとに、いくつかのソリューションシナリオを用意して、それぞれに「オファリング」と呼ばれるシステム提案・構築のために必要な手引書のようなドキュメントを提供する。文書だけでなく、それにあわせて1シナリオに最低3人技術者を育成するためのトレーニングサービスも提供する。価格は380万円から。発売時点で用意するシナリオは8種類(図参照)で、1年以内に新たに12種類を追加する計画だ。
同サービスを使う具体的なメリットの一例として、ノウハウの早期取得では、実際のプロジェクトを3か月経験しなければ取得できない知識を3日で得られるという。一方、ソリューションのシナリオを自社で作成する場合、例えば「仮想化による物理サーバーの集約」ソリューションでは、6人で1か月かかるが、同サービスを活用すれば、その時間が不要としている。
高橋慎介・執行役パートナービジネス営業統括本部長は、このサービスを提供する対象のSIerとして、「ミッドレンジ(中堅)のなかの上のエリア。4000社ほど存在しているとみている」と説明。目標は3年間で契約企業100社、500人の技術者育成としている。
マイクソフトは、実はSIer向けのサービスとして「コンサルティングエクスプレス」という類似サービスを7年前から開始していた。このサービスを利用するITベンダーは合計で25社だった。新サービスは、「コンサルティングエクスプレス」に代わるものだが、「コンサルティングエクスプレス」を利用するには最低でも1000万円が必要だった。
マイクロソフトは今回、大きく利用の敷居を下げ、中堅SIerに向けてサービス事業を提案する姿勢を鮮明に示した。(木村剛士)