開発キットを無償提供
SIP(VoIP応用の通話制御プロトコル)技術を核としたソフトウェア開発のソフトフロント(阪口克彦社長)が、NGN(次世代通信網)の課題解決を進めている。アプリケーション開発を容易にするキット「SUPREE Vision Premier(スプリー・ビジョン・プレミア)」を無償で提供開始した。開発系SIerなどから挙がっていたNGNのAPI(アプリケーションインタフェース)公開に対する不満を、実質的に取り除いた形だ。
今年2月、ソフトフロントはNTTとNGN分野で業務提携。NTTの子会社であるNTTイベンストメント・パートナーズから出資を受け、NTTと共同でNGN向けアプリケーション開発キットの開発に乗り出した。これは、個人と法人の両市場でNGN回線の加入者が予想に反して少ないことを物語っている。なかでも、法人市場でNGNの活用を促すアプリケーションが登場していないことが、加入者が伸び悩む最大の要因だ。

これまでアプリケーション開発が進んでいなかったのは、NGNに関するNTTとの契約が複雑だったためとの見方が強い。API公開には、煩雑な手続きを経なければならない。しかも、NGN回線の確実な販売見込みがなければ、NTTは対応しないなどといった暗黙の了解事項もあったようだ。そのため、開発系SIerなどはアプリケーション開発に対する意欲が薄れていた模様。こうした不満を取り除くために、ソフトフロントが満を持して開発キットを無償で提供することになったのである。
具体的には、アプリケーションベンダーが「SUPREE」を6か月間程度にわたって試用することができる。通常、NGN向けアプリケーションを開発する際は期間として8か月以上は要するといわれていたが、「SUPREE」を活用すれば1週間程度で開発できるという。実際、簡単なアプリケーションであれば半日で開発が可能だ。6か月程度という設定は、質の高いアプリケーション開発を念頭に置いたためだ。ビジネスモデルに関しては、「SUPREE」の活用でアプリケーションを開発してユーザーを獲得した際、クライアント端末へのインストール1台あたり600円のロイヤリティをソフトフロントに対して支払う形をとる。
6か月間程度の試用期間やロイヤリティの料金が低価格という点は、アプリケーションの開発側にとってユーザーからのサービス対価を踏まえればビジネスの旨味があるといえそうだ。課題として挙げられるのは、アプリケーションを売る販路が形成されていないことだが、「まずは、ユーザーがNGNを活用するメリットを見出せるアプリケーションの登場が重要なのではないか」と、ソフトフロントの佐藤和紀・取締役研究開発担当はみている。確かに、これまでとは異なった次世代の回線となるだけに、どれだけ売れるのかは未知数。そういった点では、アプリケーションの拡充が先決というのは頷ける。(佐相彰彦)