中部地域の有力SIerユーフィット(竹田喜彦社長)は、マイクロソフトのERP「Microsoft Dynamics AX」を活用したソリューションを8月1日に発売する。ERP構築事業を伸ばすためのプラットフォームとして、採用を決断。会計機能を独自強化して販売する。過去に日立製作所のERPを担ぎ、今ではエス・エス・ジェイ(SSJ)製品を扱うユーフィットが、ERPプラットフォームとして「Dynamics AX」を選んだ理由は何か。
「実績と低コスト、そして柔軟性と使いやすさ」。ユーフィットの佐藤祐次・取締役執行役員ソリューションビジネス事業部長は、「Dynamics AX」を採用した理由を四つの要素にまとめて説明した。世界1万1000社の導入実績に裏付けされた安心感と、類似ERPに比べて初期・運用コストが安価な点、カスタマイズを前提とした設計、Office製品と親和性が高い直感操作を評価したものだ。
ユーフィットは、「Dynamics AX」をそのまま売るのではなく、“プラットフォーム”として取り扱い、帳票作成など独自の会計機能を開発・付加して販売する。導入に関する要件分析から、設計・構築、既存ERPからの移行支援サービスまでを手がける。オリジナルの会計機能と、「一般的に6か月かかる」(ユーフィット)構築期間を4か月で納入する短納期を武器にする。構想から開発、そして発表まで約1年をかけ、5人の専門チームが中心になり準備してきた。
ユーフィットは1970年設立のSIerで、昨年度(09年3月期)の売上高は424億円。08年4月にITホールディングスの傘下に入った。本社を名古屋市中区に置き、中部地域でのSI・ITサービス事業に強い。得意は金融機関向けで、公共機関や製造業向けビジネスも展開する老舗だ。
ERP事業を本格的に始めたのは今から約5年前で、今回が初めてではない。これまで約40社のERP構築実績がある。過去には日立製作所の「GEMPLANET」を担いだことがあり、今はエス・エス・ジェイ(SSJ)の「SuperStream」を活用している。それでも手間と時間をかけて、「Dynamics AX」の取り扱いを始めたのは、新市場にアプローチするためだ。
ターゲットは、中部地域で7~8年前にERPを導入し、運用コスト増大に悩む大・中堅企業と外資系の日本法人。四つの評価ポイントの一つである「低コスト」と多言語多通貨対応、海外実績が多い点を前面に押し出すつもりだ。SSJ製品では提案しにくかった中堅から大企業と外資系企業に攻め込むために、マイクロソフトをパートナーに選んだ。まずは1年間で5~10社、3年間で50社のユーザー企業獲得を狙う。(木村剛士)
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| 「Dynamics」2倍の成長 |
| ユーフィットのように「Dynamics AX」に着眼するITベンダーが増えている。約2年前の発売で、パートナー数は国内で現在33社に拡大。パートナーが開発したソリューションは900を超える。このチャネル網が奏功し、「昨年度(09年6月期)のビジネス規模は、一昨年度の約2倍」(マイクロソフトの春木菊則・Dynamics事業統括本部副統括本部長兼パートナービジネス推進部長)。今回、中部地区に強いSIerを仲間に入れたことは、マイクロソフトにとってもかなり大きな成果となる。「Dynamics」は、CRMも含め全売上高に占める比率はまだ少ないはずだが、不況下でも着実に伸びるプロダクトになっている。 |