NIerトップの技術力をアピール

クラウドコンピューティング時代のビジネスモデルを構築するため、通信事業者やSIerなどがデータセンター(DC)の増強を図っているなか、ネットワンシステムズ(吉野孝行社長)ではDCインフラ構築面での優位性を訴え始めた。同社は、環境整備のコアになるのがネットワーク(NW)と判断。サーバーやストレージの仮想化が進みつつあり、NW仮想化も含めて提案するのが必須との判断から、国内トップのNIerとして高い技術力をアピールする。
昨年度(2009年3月期)、ネットワンではネットワークインフラ構築を中心としたプラットフォーム事業が大きく伸びた。売上高では、前年度比83%増を記録。DCなどの仮想化関連に限れば、前年の約4倍に伸びたという。
大型案件については、ソニーから800台のサーバーコンソリデーション、コンテンツ事業者から約200台のサーバー移行などを獲得している。こうした案件は、リモート監視センターなどで「当社がラックで250本、コンピュータ関連機器で5000台を社内で保有し、実際に稼働させている」(吉野社長)ことが要因。社内での経験を生かし、ユーザー企業に提案していることになる。
同社が社内で大規模なシステムを所有でき、しかもユーザー企業から大型案件を獲得できているのは、サーバーやストレージ、NWで技術者を揃えているためだ。クラウドコンピューティング時代に備えた技術育成については、サーバーやストレージの分野ではEMCやVMware、3teraなどの製品で技術取得者を増やすことに力を入れている。NW分野では、シスコシステムズやジュニパーネットワークスの製品で多くの技術資格取得者を持つ。吉野社長は、「コンピュータとNWの両分野でスキルの高い技術者を揃えたベンダーは少ないだろう」と、優位性をアピールする。しかも、ポイントはクラウドコンピューティング環境の整備が進むにつれ、NW経由でのリソース一元管理が必須になるということだ。つまり、「これまで当社が主力に据えていたNW事業がクラウドのコアになる」。加えて、サーバーとストレージの分野も把握しながら提供できる点が同社の強みになる。

NTTがNGN(次世代通信網)を活用してアプリケーションまでを網羅したサービスを提供していることや、サービス型モデルを提供しようとするSIerが多いこともあり、今後はDCの増強を図る傾向が高まるのは確実だ。また、通信と放送の融合に向け、政府が「情報通信法(仮称)」として現在の通信と放送の各法制度を一本化する動きも出ている。吉野社長は、「クラウドサービスモデルを模索する企業に対して、当社がインフラ構築の面で支援できる」と言い切る。クラウドサービスが主流になるなか、“黒子”として確実に案件を獲得していくのが同社の戦略である。(佐相彰彦)