次世代DC向け事業の拡大へ

UPS(無停電電源装置)メーカーのエーピーシー・ジャパン(APCジャパン、内藤眞社長)が、次世代データセンター(DC)向け事業の拡大を進めている。このほど「Smart-UPS」シリーズの新製品を市場に投入。「1システム1UPS」というコンセプトで、DCのUPS導入を促していく方針だ。同社では、新製品で中容量に対応したことで、販社SIerの拡販に期待している。
APCジャパンは、このほどUPSの新製品として「Smart-UPS RT 6000」と「Smart-UPS RT 14k/18k」「Smart-UPS VT(タワー型20/30kVA、ラック型20/30kVA)」の3製品を発売。特徴は、「1システム1UPS」を追求し、中容量に対応したことだ。
これまで同社では、サーバーなどのIT機器1台に対してUPS1台で対応する小型UPSの拡販を図ってきた。今回の新製品では、サーバー、ストレージ、ネットワークを含めた一つのインフラシステムに対してUPS1台の導入を促していく。これは、SaaSやPaaSなどの提供に向けてDCの増強を図る事業者が多いことや、金融機関などDCを持つユーザー企業がシステムを1拠点に集中させる「プライベート・クラウド」を構築する動きが進みつつあるため。次世代DCのニーズをつかむことを狙いとしている。DC内で仮想化などによるシステム統合が進めば、UPSに求められる電源容量も増えてくる。また、サーバーとストレージをネットワーク経由で接続している環境で、IT機器1台にUPS1台という状況では、各UPS間の連携を視野に入れなければならなくなり、管理コストの点などで非効率だ。今回発売した中容量UPSで、こうした課題を打破するわけだ。
また、「販売パートナーの事業拡大につながる製品を次々と市場に投入していく」(内藤社長)ことを打ち出しており、なかでもDC向け事業拡大を図ろうとするSIerとの協業強化を重視している。
同社は昨年、DC向け事業をベースに売上高が前年の2倍に達するなど、業績は好調に推移している。「“ミニマムスタート”でシステムの増強を図るDCに対してUPSを提案してきた」(内藤社長)ことが奏功したという。この流れを止めないよう、システム構築を進めるSIerが提案しやすい製品を投入したことになる。
ブレードサーバーによるサーバー統合化やストレージ機器に関する需要増、ネットワークインフラ増強という波が訪れていることに加え、事業継続を切り口としたニーズが一段と高まっているなか、UPSを付加価値製品と位置づけて担ぐことは、販社にとって事業拡大を図っていく妙手になりそうだ。その点では、新製品だけでなく、APCジャパンが提供するSIerへの支援強化策にも期待がかかる。(佐相彰彦)