キャンペーンでVistaの二の舞回避か
マイクロソフト(樋口泰行社長)は、次期クライアントOS「Windows 7」のボリュームライセンス(VL)発売日を決めた。個人向けの販売開始日から約2か月前倒した9月1日。法人向けでコンシューマ市場よりもひと足先に新OSビジネスがスタートすることになる。
ボリュームライセンスとは企業や団体が複数PCを一括導入する際のライセンスを指す。9月1日のボリュームライセンス発売に合わせ、マイクロソフトは旧OSから「Windows 7」へのアップグレード権を優待価格で販売する施策も同日に始める。コンシューマ市場よりも一足先に法人市場で新OSビジネスの火ぶたが切られる。
キャンペーン施策では、「Windows XP Professional」または「同 Vista Business」の利用者は、通常よりも2800円安価な1万9800円で「Windows 7 Professional」にアップグレードできるようにした。期間は2010年2月まで。マイクロソフトは過去、新OS発売の際、発売日前にキャンペーンを展開してきたことはあるが、発売後に行うのは今回が初めてで、異例の措置だ。今年2月から8月末日までの期間で、別のキャンペーン施策(法人向け先行優待キャンペーンなど)も推進しており、“スタートダッシュ”への意気込みがうかがえる。
それもそのはず。現行の「Windows Vista」が法人市場に浸透しておらず、「Windows 7」で同じ轍を踏むわけにはいかないからだ。大企業向け調査に強いアイ・ティー・アールの生熊清司・シニアアナリストは08年10月の段階で、「法人が所有しているPCのうち、約80%のOSは、『Windows XP』で占められる」と分析している。(図参照)。
「Windows Vista」の発売は07年1月30日。いまだに前OS(XP)の利用が8割を占める状況は問題だ。OSとオフィス系アプリケーションの売り上げ比率が全売上高のなかで大きい日本法人としてはなおさら深刻だろう。
東條英俊・コマーシャルWindows本部ビジネスマーケティング部マネージャーは、「法人が所有している全PCのうち、半分は『Windows 7』が動作するスペックをもっている」とみる。新規にPCを購入しなくても、既存PCを生かして新OSにアップグレードすることが容易な点をPRしている。
生熊シニア・アナリストは、「XP」や「Vista」を活用した場合に比べて「Windows 7」のほうがPCの保守・運用コストが安価な点、そしてユーザー企業の関心が高いセキュリティ機能が強化されている点を指摘し、Windows 7移行に好意的な見解を示している。「Vista」ではなく、「XP」からの移行をどう促せるかが普及のカギを握っている。(木村剛士)