SaaS型ERP(統合基幹業務システム)開発のネットスイート(田村元社長)は、体制を一新してライバルを追い上げる。SaaS型でいち早くサービスを始めた同社だが、営業支援や顧客管理などフロントオフィス系の分野で先行するセールスフォース・ドットコムに大きな差をつけられたままだ。日本法人の経営陣を刷新し、富士通や富士通ビジネスシステム(FJB)とのパートナーシップを強化。今後拡大が見込まれる財務会計など、バックオフィス系のSaaS需要の取り込みに力を入れる。
富士通との連携を強化

ネットスイートのグローバルでの直近の年商は、前年度比約40%増の1億5200万ドルと順調に伸びている。だが、一方でライバルのセールスフォースの年商はすでに10億ドルを超えており、その差は大きい。営業支援(SFA)や顧客管理(CRM)をメインとするセールスフォースは“営業が、営業で使うツールを、ユーザー企業の営業部門に対して売り込む”手法で、迅速に多数の商談をまとめてきた。この点、財務会計などERP系のSaaS化は、商談の出足が鈍い。今年8月、ネットスイート日本法人トップに就いた田村社長は、「これまでSaaS化が十分に進んでいない領域だけに、今後の伸びは大きい」と、遅咲きの商材だと冷静に捉える。
調査会社などの調べでは、2007~2012年までの年平均成長率は、パッケージ売りのオンプレミス(客先設置型)CRMやERPよりも、SaaS型のほうが伸び率が大きい(図参照)。SaaS型の内訳をみると、財務会計などのバックオフィス系の成長率が高いと予測されている。田村社長は、就任とほぼ同じタイミングで富士通、FJBと業務提携を結び、巻き返しに向けた体制づくりに着手。3社協業によって、向こう3年間で500社の顧客を獲得する強気の計画を立てる。
ネットスイートは、オラクル創業者のラリー・エリソンが立ち上げに深く関わるベンダーだ。同時にオラクルは、富士通と関係が深いサン・マイクロシステムズの買収を決めるなど“ネットスイート─オラクル─富士通”ラインでのビジネスの発展の可能性は少なからずある。バックオフィス系は、国外データセンター(DC)でのデータ保管に慎重な姿勢を示すユーザー企業が少なくない。富士通は国内に巨大なDCを所有し、ネットスイートは富士通のDC設備を借りるという選択肢もある。ユーザーの心理的な障害をどう取り除くかが、ERPのSaaS化ビジネスの成否を左右する。