地域で活躍する旧オフコンディーラーの販売系SIerは、ユーザー企業のコスト低減要求に応えて「売り切りからストックへ」とビジネスモデルを転換させている。地域のユーザー企業や自治体は景気低迷の影響をもろに受けており、固定費を減らす一環としてシステム費の削減を加速させている。ユーザーサイドでは、基幹システムを自社に設置して情報系システムを社外のデータセンターに預けたり、ASPを利用したりして、IT投資の6~7割を占めるといわれる運用保守費の削減を急いでいる。そのため、「売り手」側は変革を余儀なくされているのだ。
NEC製品や中小企業向けの汎用的な業務ソフトウェア販売などで実績を上げてきた山梨県のシステムインナカゴミは、最盛期に売り上げの8割を占めていたハードウェア販売が、現在は4割にまで減少した。「当社とユーザー企業の双方が、安定的に儲けられる仕組みを考えている」という中込裕社長は、まずは安価パソコンや「OpenOffice」など、無償オフィスソフトを零細企業に提案・導入する活動に力を入れている。導入先の企業が儲かった暁には、「当社データセンターでのシステム運用を提案する」(同)ことで顧客を囲い込み、安定的に保守料金を得るという息の長い展開だ。
食品製造業や運輸・物流業、組立加工業など「リーマン・ショック」で多くの企業が需要減の憂き目にあった新潟県では、系列が異なり競合関係にあったベンダーが、潜在顧客の発掘で手を組んだ。県内にあるCEC新潟情報サービスや丸新システムズなどが、「新潟ITソリューションパートナー会」を結成。「1社だけで潜在顧客を捜すのには限界がある」(CEC新潟情報サービスの森山豊昭・常務取締役)と、各社の製品・サービスを持ち寄ってフェアを開催。地元顧客を集客し、受注を増やす活動を展開しているのだ。
新潟県内には、老朽化したオフコンを保有する企業がまだ多く、現在はリプレース時期にあるという。同会に参加するベンダーは、まずオフコンのオープン化を促進するとともに、自社データセンターへ呼び込む施策を展開して、ストック型の収益体質にしていこうとしている。
行政システムを得意とする長野県の電算は、2008年度(09年3月期)に「定額給付金」関連のシステムなど自治体向け“特需”で過去最高益を確保した。一方、民需では県内に成長著しい有力企業が乏しく、苦戦している。
同社の黒坂則恭社長は「ここ数年は、汎用機やオフコンをクライアント/サーバー型に置き換える需要があり、ある程度の収益を得た。ただ、この先は運用保守を含めた提案をしなければ、顧客を獲得できない」と、一時的にオフコンリプレースで売り上げを得たものの、将来的には「クラウド/SaaS」を含めたデータセンター利用のビジネスモデルへ転換する必要を感じている。地場の中小企業を相手に事業展開するベンダーの動きをみる限り、「売り切り」だけのビジネスモデルは、この先数年で消滅する可能性が高い。(谷畑良胤)