セールスフォース・ドットコム(セールスフォース、宇陀栄次社長)は、チャネル体制を固め、事業拡大を図る基盤を整えた。とくに、自社製品を組み合わせてSaaSを中心とした販売を手がける「VAR(バリュー・アデッド・リセラー)」が1年間で3倍以上に増加。サービス型モデル提供の波が押し寄せているなか、順調に販売網を広げている。
VAR販社が3倍以上に増加
セールスフォースが提供するパートナー制度の一つである「VAR」は、SaaSと自社製品を組み合わせて提供する販売代理店に位置づけられる。イングレーションが可能で、製品販売からサポートまでを手がけられる。昨年までは5社程度だったが、今年8月の時点で17社に増加。約1年間で3倍以上に増えたことになる。
VARの面々が多様であることも特徴だ。NECや富士通などPaaSベンダー、CSKや伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)などいったSIer、NTTコミュニケーションズといった回線を使ったサービスが得意なベンダーも揃っている。また、ディストリビュータとしてソフトバンクBBが名乗りを挙げているほか、今年に入ってダイワボウ情報システムとパートナーシップを組んだことも大きい。アライアンス事業本部を担当するフレッド・マカレイグ執行役員は、「さまざまな業界の幅広い層をユーザー対象として想定することが可能になった」と自信をみせている。
ここにきて急激にVARが増加したのは、「クラウド環境の波が押し寄せているため」と同社では捉えている。さらには、世界同時不況の影響でコスト削減の観点からIT投資を抑える傾向が高まっている。こうした環境のなかで「ユーザー企業は、SaaSなど低価格の課金方式サービス型モデルを一段と求めるようになる。そのため、これまでSaaSは儲からないとみていたITベンダーが、ビジネスにつながると判断したのではないか」とみている。
ただ、課題は「導入するケースが多いのは大企業が中心であること」という。そこで、近くSMB(中堅・中小企業)に適した「シンプルな機能に限定したSaaSソリューションを市場投入する」という計画を立てている。また、リース会社との業務提携でSaaSとIT機器を組み合わせた新しいサービスも模索している。これにより、とくにVARのディスリビュータがビジネスを拡大できる環境を整える方針だ。サービス型モデルがSMB市場にまで広がるようになれば、IT業界にとって大きな潮流が生まれることになる。