プリンタメーカーのOKIデータ(杉本晴重社長CEO)は10月1日から、主力プリンタシリーズ「COREFIDO(コアフィード)」のテレビCMをスタートした。女優の菅野美穂さんを起用し、ブランド認知度の向上を狙う。これだけを見ると、業界内で特別なインパクトはない。しかし、企業向け単機能プリンタ市場をメインに据える競合が、エンドユーザーに対して直に訴える戦略で販売台数を伸ばしており、OKIデータも重い腰を上げたと推測できる。この過当競争から目が離せない。
菅野美穂VS.小林麻央、CMで火花
OKIデータはOKI(沖電気工業)の子会社として分離創立し、今年で15周年を迎えた。10月1日には、都内ホテルで「感謝の集い」を開催。集まった販売会社を前に杉本社長CEOは「(OEM供給を除く)ページプリンタ市場で、販売台数を08年のシェア4.4%から2011年には10%へ引き上げる」と、ぶち上げた。

15周年の「感謝の集い」で、シェア10%を公約した杉本社長CEO(円の中は、ビデオでコメントを寄せた菅野美穂さん)
2008年、「5年間無償保証」の特典がつくプリンタ「COREFIDO」を立ち上げ、大手ディストリビュータの2次店を中心に指名買いを増やした。各単月レベルで例年の平均を超える販売台数実績を記録したほどの売れ行きだった。しかし、そう楽観できる状況にはない。集いの会場では、「このまま何もしなければ、恐らく10%目標は絵空事だった」(某販社の幹部)との声が挙がるほど、エプソン販売や、とくにブラザー工業の追い上げが急だったことが分かる。
OKIデータの調査によれば、ユーザー企業が、プリンタ導入で比較検討にOKIプリンタを候補に上げる率は、上位3社の後塵を拝して16.4%と低い。しかし、比較検討するプリンタに選ばれた場合は、購入される率が58.6%と、競合を圧倒している。要は「知名度は低いが、製品は評価されている」(杉本社長CEO)ということだ。
そこで、テレビCMという手法で、エンドユーザーに直に訴えることにしたのだ。形は異なるが、この「エンドユーザーに直に」という方法は、ブラザー工業が先行し、キャスターの小林麻央さんを使ったCMなどを展開。エプソン販売は、年末年始にかけて実施した「お得祭り」や「夏の限定」「秋の新作」など、季節ごとの特価売りをエンドユーザーに訴え、販社が“刈り取る”方式を取っている。
これに従前からページプリンタ市場で影響力のあるリコーやキヤノン、富士ゼロックスが加わる。OKIデータのCM費用は非公表だが、売れっ子の起用なので安くはない。CM費用の元を取り、一時的に浮上するだけでなく、シェア10%を獲得し成長していくには、引き続き代理店網の充実策が必要になる。(谷畑良胤)