日本ユニシス(籾井勝人社長)とグループ会社は、「あたかも自社専用のクラウド」を所有しているようなクラウド・サービスを開始する。同社は、国内大手ITメーカーに先行し、クラウド基盤を確立。全国の要所に配したデータセンターからサービスを始めている。今回は、企業内利用型のクラウドや複数のDCロケーションを高速回線で結合し、顧客データを分散させるストレージ・サービスなどを新たにスタート。同社では「ビジネスパーク」と呼ぶSIerやソフトウェアベンダーによるチャネルを形成している。新サービスの付加により、地場販社と連携した地域の中堅・中小企業(SMB)開拓で先行しそうだ。
販社と地場開拓に好機か?
日本ユニシスのクラウド・サービスで新たに強化されたのは、既存の東京に加え、大阪(10月)と北海道(来年1月)に設置する「クラウド型iDC(インターネット・データセンター)基盤」をベースに自社内利用型の「エンタープライズクラウド」や場所借り形態で利用できる「ストレージクラウド」サービスなどだ。
国内では、ここへきてデータセンター事業者から不特定多数のユーザーへサービス提供する「パブリック型クラウド」と呼ぶサービスが相次いで登場している。しかし日本ユニシスは、既存のITシステムをそのままクラウド環境へ移行するニーズが高いと、臨機応変にITリソースの追加や削減、変更ができる「エンタープライズクラウド」を指向することに決めた。
同社が「エンタープライズクラウド」を始めるのは、当初からの既定路線。だが、リーマン・ショック以降、ITコストの削減を望む企業が増えていることから、「既存のITシステムをそのままに」というキャッチフレーズは、こうした企業に受け入れられるだろう。
地場の有力SIerでは、クラウド時代の到来を見越して自社データセンターで顧客のシステムを“預かる”ビジネスを強化している。しかし、データセンターをもたないSIerは、クラウドを手がけようにも方法が見つからない状況だった。
同社はクラウド事業で、これまで手をつけていなかったSMBを攻める構えだ。そのため「ビジネスパーク」を形成し、地場の実状をよく知るパートナーにデータセンターリソースを貸し出す方式を推進中だ。地場SIer側で日本ユニシスのクラウド基盤を生かして、新たな収益モデルが描ければ、同社のクラウドビジネスは、確実に広がるだろう。(谷畑良胤)