日本ユニシスなど国内ITベンダー5社で、SaaSサービスの「再販モデル」を立ち上げることを目的とした任意団体「SaaSパートナーズ協会(S3P)」のロードマップなど全容が明らかになった。日本ユニシスは早くも、ITコーディネータ(ITC)などがインターネット上でSaaSを販売できるWeb上店舗「Webストア」のサービスを11月中に提供開始する。1年後には、同社関連に限らず200~300店舗の開設を目指していることが分かった。目論見通りにITCなどの利用が拡大し、ユーザー側の満足度が向上すれば、S3Pの方式はSaaSの再販基盤としてデファクトスタンダード(事実上の業界標準)になることもあり得る。
将来的に1000店舗開設目指す
11月20日にS3Pが開催したITベンダー向けセミナーには、約70人が参加。S3Pが全国への波及を目指す「Webストア」などに対する関心の高さを示した。参加者は、ソフトウェアベンダーやSIerなど幅広く、各社とも「ビジネスモデルの転換」を本格的に検討し始めていることがうかがい知れる。S3Pの立ち上げを先導したきっとエイエスピー(きっとASP)の松田利夫社長は、「セミナー参加者の大半がS3Pへの参加意志を示している」と、協会の広がりを確信する。

S3Pの記者発表で運営方針を語る松田利夫・きっとASP社長
3年ほど前から“新しいIT商材”としてSaaSが注目され始め、実際にも導入が年々進んだが、中小企業向けを中心に「SaaSサービスを流通させるルールがなかった」(松田社長)のは事実だ。
S3Pが展開を目指す「Webストア」は、オンライン・ショップ「楽天」にある電子小売店のようなイメージで、ITCや地域で活躍する小規模SIerでも、S3Pが提供する共通基盤上で「Webストア」を開設し、比較的簡単にSaaSサービスをネット上で「リセール(売る)」できる。
リーマン・ショック以降、景気低迷の影響を受けて、企業はITインフラの「コスト削減」を急いでいる。このため、新たなハードウェアやソフトウェア、ネットワーク機器を導入することに躊躇している一方、既存IT資産の運用・メンテナンスの固定費削減を進めている。こうしたなかで、目的に合ったSaaSサービスが、新たなIT投資が少なくてすみ、短期間に調達・導入できれば、ユーザー側は利用を検討するだろう。ITインフラの販売低迷に悩む販売系SIerなどベンダーは、この「Webストア」を利用して、既存ビジネスと並行して徐々にSaaSサービスを拡大することができる。
S3Pは来春までに、一部の「地域ITC」による「Webストア」を開設し、サービスを開始する計画。このスキームがITC向けを中心に拡大し、小規模SIerなどを含めて1年後に200~300店舗、5~10年後に1000店舗の開設も視野に入れた計画が練られている。
「1000」という数は、ITCだけをみれば、独立系ITCの3分の1を占める。この数値目標が達成されれば、中小企業にSaaSサービスの利用は急速に広がることは間違いないだろう。SaaSサービスを「売る」議論が置き去りにされてきた国内のSaaS。S3Pの動きを中心に、パラダイムシフトが起きそうだ。(谷畑良胤)