通信事業者が提供する回線サービスをワールドワイドで簡素化する動きが出てきた。米CENX(ナン・チェン社長兼CEO)が、通信事業者の回線サービスをつなぐエクスチェンジ技術を開発。このほどデータセンター(DC)を設置することでサービス提供を開始した。このDCを経由すれば、ワールドワイドで各通信事業者が提供する回線サービスが簡単に接続できるという。通信業界に大きな影響を及ぼしそうだ。
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| ナン・チェン社長兼CEO |
米CENXは、通信事業者向けエクスチェンジサービスを提供する会社として2009年2月に設立。米国のニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴの3拠点にDCを設置し、このほど稼働を開始した。
創業者で社長兼CEOのチェン氏は、キャリア・イーサネット・スイッチの先駆者で、イーサネット・スイッチの標準化を目指す団体「MEF(メトロ・イーサネット・フォーラム)」の中核人物として世界的に名を馳せている。チェン社長兼CEOは、「通信事業者間の煩雑なやり取りを取り除くことがユーザー企業にメリットをもたらす」と力説する。
通信事業者が世界で回線サービスを提供する場合、これまでは各通信事業者が敷設したい国の有力な通信事業者に回線が引けるように話を持ち込んで契約するやり方が一般的だった。NTTグループが契約を締結していない国では、ユーザー企業がNTT回線を使えないということになる。ユーザー企業にとっては、現地の通信事業者とも契約を結ばなければならないわけだ。
グローバル化が進むなか、確かに通信事業者次第で同じ回線を使えないというのは、IT関連でグローバルな統合システムを構築しようとしている企業にとっては大きな痛手となる。「主要な国の通信事業者同士は契約を結んでいないケースが多い。しかし、今後は新興国などに進出するグローバル企業が増える。そのなかで、回線サービス提供の仕組みが進化しないのはおかしい」と、チェン社長兼CEOは訴える。
CENXのデータセンターを活用している通信事業者数については現段階で明らかにしていないが、「近く主要な通信事業者の7社程度と契約を結ぶ」という。また、「今後は新興国を中心に話を進めていきたい」考えを示す。
CENXの取り組みは現段階で小さなもので、しかもビジネスモデルの成否も未知数だ。しかし、SaaSなどクラウド時代という回線サービスをはじめとした通信インフラがさらに重要視される世界を見据えるとなれば、通信事業者をつなぐという同社の役割は大きく化ける可能性を秘めている。(佐相彰彦)