リコー(近藤史朗社長)は、プリンタ関連のサービス販売を強化する一方で、プリンタ以外のIT製品を調達して利ざやを得る体制の構築を視野に入れている。近藤社長は週刊BCNの取材に、「『サービス・サプライヤ』としてハードウェアやソフトウェアの売り買いから利ざやを得たい」と、同社にある商社的な機能の見直しを示唆。これまでも、他社メーカーからIT製品を仕入れ、直系販社などで物販をしてきた。だが、利幅が少ないために体制を見直し、収益のかさ上げを狙う考えのようだ。
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週刊BCNのインタビューで「モノ売り」の商社機能を見直すことに言及したリコーの 近藤史朗社長 |
リコーは「第16次中期経営計画」で、2010年度(2011年3月期)に売上高を、08年度に比べ3500億円増の2兆5000億円にし、営業利益率を同4.7%から倍以上の10%に引き上げる計画を打ち出している。この中計を実現するために、プロダクションプリンティングやアウトソーシングなど「狙いの事業」の拡大と「構造改革の加速」を急ぎ、早期に収益改善を図ろうとしている。
しかし、世界で抱える直売担当者とサービススタッフだけで22万5000人の大所帯を維持するために、「もう少し、頭を捻らないといけない」(近藤社長)と指摘。市場の伸びが期待薄で、価格競争が激しいプリンタやデジタル複合機(MFP)関連と、急速な売上増を望めないソリューション販売だけで利益を得ることに「物足りなさを感じてきた」(同)と語った。そのうえで「安いIT商材を世界のサードパーティーから仕入れ、リコーの販売ルートで卸売る商流に手を入れ、これまで以上に利ざやを得たい」(同)と、調達システムを見直し、商社的な機能を強化する必要があるとした。
同社はこれまでも、自社生産のプリンタ以外に、ユーザー企業の要望を受けて、サーバーやパソコンなどのハードウェアや、プリンタと接続して使うソフトウェアを他社から仕入れ、「ソリューション・サービス」という形で販売をしてきた。近藤社長は「当社は生産者と商社の顔をもつ。ここで商社機能を再認識したい」と、微妙な表現ながら、在庫をもってディストリビューションする機能を自社につくるのではなく、「他のプレーヤーと組んで、調達体制をつくりたい」(同)と、中間マージンをこれまで以上に得る仕組みづくりを示唆した。
IT製品を販売するSIerのなかには、ディストリビューション機能を独立会社として置き、すべてのIT製品をこの会社経由で販売し、利ざやを稼ぐルートを確立しているところもある。推測の域を出ないが、リコーの場合は、これらの方式とは異なるようだ。
近藤社長の話はここまでで、具体的にこれを実行するともしないとも言及しなかった。しかし、これが実行に移された場合、リコーにIT製品を卸してきたメーカーは、いままでより多く、リコーにマージンを支払うことになりそうだ。(谷畑良胤)