キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ、川崎正己社長)の業績悪化が目立つ。昨年度(2009年12月期)は2期連続となる減収減益で、2000年代で最悪だった02年度を下回った。主要セグメントすべての売り上げが下がり、営業利益ベースで唯一黒字だったのはデジカメなどコンシューマ機器のみ。キヤノンMJではデータセンター(DC)新設に約150億円投じるなど、戦略投資を加速させるが、業績回復に即効性があるかどうかは疑問符がつく。
キヤノンMJの09年12月期の連結売上高は、前年度比17.0%減の6866億円、営業利益は同75.2%減の63億円と大幅にダウン。数年前は年商1兆円に迫る勢いだったのが嘘のようだ。営業利益ベースで見ると、複合機やSIなど主力のビジネスソリューションセグメントは33億円の赤字、製造業の投資抑制の逆風が吹き荒れる産業機器も11億円の赤字。デジカメなどコンシューマ機器の販売が、前年度比5%増の107億円の黒字だったため、全社ベースでの赤字転落を辛くも逃れた格好だ。

時折、苦渋の表情を見せる川崎正己社長(写真右)
川崎社長は、今年度(10年12月期)を「反転攻勢をかける年」と位置づけ、事業の立て直しに全力を注ぐ。
まずは、短期的な回復が見込みにくい産業機器の人員の一部をキヤノン本体へ移管して人件費を圧縮するとともに、SI・サービスの基盤となる自社所有のDCを都内に初めてつくる。DC新設でクラウド/SaaSサービスを拡充に弾みをつけ、さらに、キヤノン製のハード・ソフトとの連携を強化。付加価値を高めて業績回復の原動力の一つに育てる。
プリンタなどのハード販売は、今回のような不況時に弱く、コンシューマ機器はヒット商品の有無で大きく振れやすい。国内市場は成熟しており、従来のメーカー系販社のビジネスモデルは限界にきている。同社では、都内自社DCの完成を待たずに、自社ハード製品との連携が可能な独自のクラウド/SaaSサービスを拡充。グループ会社で上場SIerのキヤノンソフトウェアを今年5月をめどに完全子会社化するなど、グループ企業や製品・サービスの連携強化を加速させる。ただし、すぐに効果が数字に現れるわけではない。今期(10年12月期)の売り上げはほぼ横ばいで、営業利益は80億円の見通し。腰を据えたビジネスモデルの組み替えが求められそうだ。(安藤章司)