富士ソフト(白石晴久社長)が、クラウドサービスでマイクロソフトとの関係を強化する。クラウドサービス「Azure(アジュール)」などの販売を富士ソフトがコミットするもので、関連ソフト製品・サービスで2012年度に70億円の売り上げを目指す。富士ソフトは、大手SIerで最も早くGoogleの販売代理店契約を結び、同社企業向けサービスではトップクラスの販売実績を誇る。貪欲にクラウドサービスの品揃えを拡充する富士ソフトの“目利き”はいかなるものなのか――。
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| Google系の「クラウドコンピューティングセンター」とマイクロソフト系の「マイクロソフトソリューション&クラウドセンター」が並ぶ富士ソフト秋葉原事業所 |
3月中旬に開かれた説明会では、マイクロソフトの樋口泰行社長自ら富士ソフトの秋葉原事業所に出向き、同社の白石社長と壇上に立った。Azure関連では、富士通システムソリューションズなど、すでに50社余りのビジネスパートナーから賛同を得ている。こうしたパートナー各社との公平感を考慮すれば、今回のような特定のパートナーと個別に説明会を開くのは異例のことだ。その背景には、富士ソフト側から積極的な働きかけがあった。同社は、クラウド関連サービスの総本山である秋葉原事業所にAzureを軸とする専用のセンターを開設し、100人規模からなるマイクロソフト専任部門を設置。さらに、Azureと並ぶマイクロソフトの主力クラウドサービスであるBPOSや既存ソフトの拡販、マイクロソフトの認定技術者を今の1000人から3年後に2000人に増員するなど、具体的な投資と高い数値目標をマイクロソフト側に提示したのだ。
マイクロソフトの樋口社長は、「多くのパートナーのなかで、真剣に考え、それに見合う投資をしてくれるパートナーと、そうでないパートナーと、実際には濃淡がある」と明かしたうえで、「富士ソフトは高い目標を掲げ、投資もしてくれている」と評価。富士ソフトは、実に熱烈なアプローチをする一方で、今回開設した「マイクロソフトソリューション&クラウドセンター」の隣には、競合するGoogle系のクラウドサービスを展示する「クラウドコンピューティングセンター」を、ちゃっかりと開設している(写真参照)。どちらを選ぶかは“顧客に決めさせる”というしたたかなスタンスだ。
今はGoogleが先行するが、今年2月に本格スタートしたばかりのAzureの猛烈な追い上げも十分に考えられる。富士ソフトは“どちらが優勢になるのか模様眺め”の曖昧な態度ではなく、「両方積極的にやって、両方売れればいい」(白石社長)と、極めて明確な姿勢。成長途中で優劣がはっきりしないうちは、実際にやってみることが、顧客企業をより快適なサービスに導く“目利き”のよさにつながる。(安藤章司)

富士ソフトの白石晴久社長(右)とマイクロソフトの樋口泰行社長ががっちりと握手