“伝道師”が優位性を明言
2008年11月に発表されたマイクロソフトの「Windows Azure」。クラウドコンピューティングを実現するために用意されたプラットフォームだ。すでにCTP(評価版)の配布はスタートし、今年中にはベータ版を公開。サービスメニューや価格も同時に発表するスケジュールを組む。同社で「Azure」の伝道師(エバンジェリスト)を担う責任者の声をもとに、「Azure」がISVやSIerにどんなメリットをもたらすのかを探った。

昨年11月、米本社のイベントで「Windows Azure」は正式発表された。開発者向けCTPが配布され、マイクロソフトのクラウドビジネスが動き出した格好だ。しかし、構想が壮大なだけに、ISVやSIerにどんなメリットをもたらすかは未だ伝わりにくい。
同社で「Azure」のエバンジェリスト役を務める平野和順・デベロッパー&プラットフォーム統括本部部長は「Azure」についてこう説明する。「『Azure』とはOSだけを指すわけではない。OSからそれに付随するソフト、データセンター(DC)、DCを運用する人まで、マイクロソフトのクラウドコンピュ-ティングインフラすべてを指す」と。さらに、「Azure」の優位性をこのように主張する。「マイクロソフトはプラットフォームを提供するだけではない。インフラとして『Azure』を提供し、開発者を支援するサービスも合わせて提供できることが、他のクラウドベンダーとは異なる点だ」。
マイクロソフトは、クラウドサービスを展開したいベンダーに「Azure」というサービス基盤を提供。そのうえで、実際に開発者が容易にクラウド化しやすくするための5種類のサービスをラインアップしている。そのサービスというのが「.NET Service」や「SQL Service」などで、これらのサービスを提供できることが開発ツールベンダーでもあるマイクロソフトの強みというわけだ。
では、ISVやSIerには、数あるクラウドインフラのなかで「Azure」を選択するメリットがどこにあるのか。「.NET環境や『Visual Studio(VS)』で開発した資産をそのまま使えるのが『Azure』の強み。他社基盤では、新たな開発言語を覚えなければならないなど、敷居が高い。それがISVがクラウド移行に二の足を踏んでいる最大の理由だ。『Azure』では、『.NET Framework』や『VS』を最新環境にしておきさえすれば、それだけでクラウド型アプリを作成可能だ」。例えばJTB情報システムではコンシューマ向けネットサービスで、クラウドへの移行をわずか3日間で実現したという。
マイクロソフトは今年中にCTPの内容を拡張してβ版を配布する予定で、その際にサービスメニューや価格を明示する計画だ。平野部長によれば、価格体系のイメージは「Azure」の基本利用料金は月額や年額の固定料金制で、付随する各サービスは従量課金制になる可能性があるという。また、今年度(2009年6月期)下期からは、「Azure」のホワイトペーパー(技術文書)日本語化を本格的に開始し、「Windows+Services Consortium(wipse)」では「Azure」を使った実証実験を開始する計画を明らかにしている。09年、同社は「Azure」を軸にクラウドビジネスを一気に浸透させようと動き始めている。(木村剛士)