米シマンテック(エンリケ・セーラムCEO)は、自社のパートナープログラムを大幅に強化する。従来の取引高中心のパートナー制度から専門特化型のプログラムに置き換えていくという。シングルポイント製品のライセンス再販という従来型のビジネスから脱し、複雑化する顧客の課題を解決するため、ソリューションとして提供していく必要性が高まっており、リセラーのスキル向上が重要視されている。
シマンテックが設定するパートナーランクの「スペシャリゼーション(専門分化)」とは、ストレージ、セキュリティといった同社の事業分野を、スペシャリゼーション認定のエントリとなる「SMB」をはじめ九つの専門スキルに分類、体系化したプログラムだ。アジア・太平洋・日本(APJ)地域では「SMB」と「Endpoint Management」「DLP」が開始済みで、今後順次認定するスペシャリゼーションがリリースされる予定。「SMB」はすでに日本で約60社、APJ全体では約400社が認定を受けている。専門特化型のプログラムへの移行は12月から現状は準備期間と位置づけ、APJのパートナー5000社強に対して参加を促す。
スペシャリゼーション認定にはシマンテックが用意した「シマンテックセールスエキスパート」「シマンテックテクニカルスペシャリスト」などの営業、技術における資格を要件に応じて一定数取得していく必要がある。これまでは取引高に応じて設定していた「Platinum」「Gold」「Silver」「Registered」の4カテゴリレベルを生かして、取引高からスペシャリゼーションの取得数に置き換える。投資をしてスキルを高めるほど、財政面でのメリットやマーケティング、スキル関連の情報提供などの面でパートナーへの支援は手厚くなり、これまで取引高が低かったパートナーにとっても、上位ランクの門戸が開かれるという。「パートナーは、売りに専念したい、製品をどう売ったらいいかなど、さまざまな課題を抱えている。販促資料やホワイトペーパーの提供のほか、トレーニングやサービス支援ソリューションを充実させる」(カリン・クラーク・シニアバイスプレジデント兼チーフマーケティングオフィサー)などさまざまな施策をパートナー向けに展開する。
ワールドワイドセールスを担当するビル・ロビンズ・エグゼクティブバイスプレジデントは「投資をしたパートナーは専門性に特化した競争優位性、差異化を提供することができるような支援施策になっている。顧客に対してアプローチしていくためにはパートナーの存在は欠かせず、当社自身も急成長できない」と話す。あるパートナーは、「単に量を販売するビジネスは限界に達している。一方、例えばDLP(情報漏えい防止ソリューション)などは、インフラ部分だけでなく、業種、業務といったアプリケーションの分野まで踏み込んだ業界向けテンプレートの提供や導入サービスを提供していく必要があり、専門性が問われる。そうなると、分野の特性によってパートナーを区分するのもうなずける話だ」とコメントする。
シマンテックはパートナープログラムを強化するとともに、パートナーの意見を吸い上げる機会もつくった。四半期ごとにパートナー満足度を測るほか、4月26~28日には中国・海南島三亜でAPJ初のパートナー向けイベント「Symantec Partner Engage 2010」において、各国のパートナーとの直接対話により意見を聞く機会も設けるなど、積極的にパートナーの声に耳を傾ける方針を示している。(鍋島蓉子)