オービックビジネスコンサルタント(OBC、和田成史社長)は、2010年度の戦略を明らかにした。同社は、09年9月に発売した「奉行iシリーズ」を主力商材に据え、リプレース市場で新規開拓を狙う。09年10月から10年3月にかけて、前年同期比の販売金額実績が138%、販売本数実績が117%、ネットワーク率約5倍(いずれも「奉行21シリーズ」の実績との比較)と順調な滑り出しを見せた。今後さらに販促強化策を投下していき、「奉行21シリーズ」からの転換を図っていく。一方「奉行V ERP」は、国際会計基準(IFRS)の適用をにらみ、新製品を今冬に発売する構えだ。
OBCは、「奉行21シリーズ」をIT投資を抑制しているユーザー向け製品と位置づける。「奉行iシリーズ」は、高機能・高拡張性を謳い、「改善意欲の高いユーザーが利用するビジネス創出型製品」(唐鎌勝彦・開発本部部長)と表現する。同社は、「奉行iシリーズ」のユーザーを増やすため、機能強化を加速化させるほかパートナー支援を充実させる。「奉行21シリーズ」との差異の解消にも取り組んでいく方針だ。なお、「奉行21 Ver.5」には、「奉行i メニュー」を搭載するとしている。
導入企業がすでに1000社を超える「奉行V ERP」は、セカンドアプローチとして、IFRS対応の「奉行V Group Management-Edition」を今年中に発売する。この製品は、中堅・中小企業で構成されるグループ企業を意識し、グループ導入が前提。担当者のスキルに依存しない操作性やアドオンなどによる高い業種適合率を謳う。実装機能として、勘定科目の同期化やグループ管理合算、グループ全体の組織管理、グループ間の社員の串刺し検索、出向や転籍を含めたグループ間異動管理などを想定している。
クラウド・コンピューティングへの対応には慎重な姿勢を崩していない。唐鎌・開発本部部長は、「クラウドは視野に入れて取り組みを開始している。ゆっくりとした変化の波と創造性のバランスを取りながら進める」と話す。とはいえ、同社もクラウドへの道筋はつけてきた。「奉行iシリーズ」の投入がそれだ。「奉行iメニュー」によって、プログラムディスクがなくても最新の機能アップが可能となる。販社であるNECネクサソリューションズは、すでにSaaS型ソリューション「基幹業務SaaS by 奉行i」を提供している。
競合に目を移すと、クラウドを巡る動きが慌しい。ピー・シー・エー(PCA)は、SaaS事業の黒字化に成功。弥生や応研は、クラウド開始を宣言している。中小企業市場に新規参入するメーカーも現れた。インフォコムが発表した「GRANDIT for Cloud」は、プライベートクラウドの場合、年商50億円以下の企業や地方のユーザーも対象となると想定している。競争の激化は避けられない様相である。トップベンダーのOBCがクラウドで繰り出す次の一手に注目が集まるのは当然だ。(信澤健太)