マイクロソフト(樋口泰行社長)は、9月上旬、パートナー向け施策を発表する年次イベント「マイクロソフトパートナーコンファレンス 2010」を開催した。今年は「クラウド一色」と言っても過言ではない内容で、樋口社長などが「クラウドに対するコミット」を強調。マイクロソフトの各登壇者は、グーグルやアマゾン、セールスフォース・ドットコムが提供するクラウドサービスとの相違点を示した内容が多く、他のクラウド事業者への対抗意識も強く感じられた。
「マイクロソフトパートナーコンファレンス 2010」は、開発や販売などでマイクロソフト製品を取り扱うパートナーを集めた毎年恒例のイベント。マイクロソフトがパートナーに向けた施策を発表するほか、高い実績をあげたパートナーや先進事例をかたちづくった企業を表彰する内容も盛り込まれている(受賞企業は右表参照)。協業先に向けたメッセージを発信することを意図した、マイクロソフトの最重要イベントに位置づけられる。
今回の登壇者は樋口社長、澤円クラウドプラットフォーム営業本部長と西脇資哲テクニカルソリューションエバンジェリスト、そして高橋慎介執行役パートナービジネス営業統括本部長の4人。スピーチ内容は、すべてがクラウドに力点を置いたものだった。今年度(2011年6月期)に入り、マイクロソフトは「クラウドへのコミット」を口にし続けているが、パートナー向けイベントでもその姿勢を鮮明にした格好だ。また、西脇エバンジェリストや高橋本部長は、グーグルやアマゾンなどのサービスと比較してマイクロソフトの優位性を示すプレゼン資料が多く、ライバル会社への対抗意識をあらわにしていた。
ユーザー向けとパートナー向けでは、同じクラウドを語るのでも意味が異なる。パートナーにとっては、クラウドサービスを手がけることは、既存のパッケージやライセンスを販売するビジネスの縮小を余儀なくされる可能性がある。マイクロソフトにとってもそれは同じだ。そんな前提のもとで、今回、世界最大手のソフトメーカーがクラウドに傾注したプレゼンに終始したことの意味は大きい。パートナーに対して、「クラウドへと一気に舵を切ろう」というメッセージを投げかけたからだ。それほどにも、クラウドへの移行は絶対的な流れと捉えているということだ。
高橋本部長のプレゼンでは、グーグルの販売パートナーであり、マイクロソフトのクラウドパートナーでもある富士ソフトの幹部が登壇。マイクロソフト製品の優位性に触れるのではなく、自社がどのように既存ビジネスから脱却し、クラウドビジネスを立ち上げたかを語った。サービスビジネス(クラウド)に疑心暗鬼のパートナーを、クラウドに誘おうとしている思惑が感じられた。
グーグルやアマゾンと比較して後発のイメージがあるマイクロソフトが、競合他社を圧倒する約9300社のパートナーを巻き込んで、クラウドを強化する姿勢を鮮明に示したイベントとなったのは興味深い。(木村剛士)