マイクロソフト(樋口泰行社長)は、2010年10月にクラウド事業で新たなパートナー支援制度を立ち上げる。従来から展開している「認定パートナー制度」とは別に用意し、メニューによっては、初年度の年会費を無料にするなどの措置を講じて、広く参加を呼びかける。樋口社長は、今年度の新年度方針説明会で「クラウドにリソースを集中する」と断言。クラウドにかける姿勢を鮮明にしている。これまで「Windows Azure」など、製品・サービス関係の発表は多かったが、10月からいよいよパートナーへの支援が動き出す。
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| 西川朋子部長。パートナー向け支援プログラムの立案・推進のキーパーソンだ |
今回の新支援制度は、2010年7月に米国で開催された年次イベント「Microsoft Worldwide Partner Conference 2010」で明らかになった。このイベントには、同社の製品・サービスを活用してITソリューションビジネスを手がける全世界のパートナーが集まる。マイクロソフトの間接販売戦略にとっては重要なイベントで、日本からも今年は160社のパートナー幹部が出席している。昨年は約5年間にわたって進めたパートナー認定制度を廃止し、今年10月から「パートナーネットワーク」という新制度に移行するという、大きな内容が用意されていた。そして今年の目玉が、今回のクラウドビジネス向けの新支援制度だ。
新支援制度は、クラウドビジネスに関心をもつシステムインテグレータやITサービス事業者がクラウドビジネスを手がけやすいように、各サポートをマイクロソフトが行うもの。メニューは、「Cloudエッセンシャルパック」と「Cloudアクセラレーターパートナー」の二種類を用意した。
エッセンシャルパックは、いわば“クラウドビジネス初心者”向けのメニュー。売上目標などを設定する必要がなく、年間費も無料(初年度のみ)で、マイクロソフトのクラウドサービス「BPOS」や「CRM Online」などが無料で社内利用できるほか、各種情報を得やすくなる。
一方、アクセラレーターパートナーは、“上級者向け”。協業プランの立案や顧客事例を3件用意するなどのコミットメントが課されるが、エッセンシャルパックの内容に加え、トレーニングや無制限のプリセールスサポート、導入支援サポートなどを用意している。これらの支援内容は米国で発表されたもので、日本では多少変更される可能性があるが、「ほぼ米国の発表に沿った形で内容を決め、10月から始める」(西川朋子・パートナー戦略本部プログラムマーケティング部部長)。
10月といえば、すでに発表済みのパートナー制度の刷新が控えている。普通に考えれば、新たなパートナー制度に、今回のクラウド制度を組み込むほうが分かりやすい。ただ、「社内でもさまざまな意見が飛び交ったが、組み込むやり方では埋もれてしまう恐れがある」(西川部長)として、別に用意した。「クラウドにかける」と意気込みを示した樋口社長。その姿勢が、この制度にも現れている。製品発表や大手企業との戦略提携ばかりが目立っていたが、いよいよ“広くあまねく”パートナーを囲い込むための施策が10月からスタートすることになる。(木村剛士)