SaaS型ERPベンダーの米ネットスイートが日本法人を2006年4月に設立してから4年半が経過した。現在、国内ユーザーは約130社。これを「3年で3倍以上にする」(田村元社長)という計画だ。田村氏が09年8月に社長に就任から1年以上が経過した。「転機の年」だったという2009年を踏まえ、どのような成長戦略を描くか、その手腕が問われる。
4年前、中堅・中小企業(SMB)向けSaaS型ERPベンダーとして日本に参入し、話題をさらったネットスイート。田村元社長は、「2009年は転機の年だった。確実に導入数は伸びている。富士通との提携も大きな意味をもつ」と話す。
富士通、富士通ビジネスシステム(現・富士通マーケティング=FJM)と業務提携したのは09年8月。SMB市場攻略の足がかりを築いた。今年度は約50社の新規ユーザーを獲得しており、これをけん引しているのが富士通グループでSMB市場の攻略を担う新生FJMだ。競合に比べて、弱かった販売チャネルの補強を実現したことは間違いない。
販売パートナーは、富士通、FJMとアイネットをはじめとする7社ほどが中心となって中堅・中小企業(SMB)を対象に販売している。周辺サービスを提供するパートナーには、ブイキューブやウイングアークテクノロジーズ、ガイアなどおよそ7社が揃う。ユーザーは「50~250人規模の企業がメイン」(内野彰・営業本部マーケティング部部長)となっている。
今後、メーカー系列店やオフコンディーラー、ユーザー系システムインテグレータ(SIer)を販売店として引き込む方針だ。内野部長は「SMBに強いSIerを販売パートナーとして増やしていきたい」と話す。
足下の状況をみると、田村社長は「人員が足りないくらい」と好調さを強調する。グローバル進出している企業が本社からのガバナンス強化のために、海外事業所に導入する事例が多くみられるようになっているという。「オンプレミス型は7割のユーザーが旧バージョンを使い続けている」(田村社長)として、この状況から抜け出すためにユーザーのSaaS型ERPの導入が進むともみている。
気がかりなのは、有力販売パートナーであるFJMが、中堅企業向けERP「GLOVIA smart」の企画・開発部隊を同社に統合して、独自のSaaS提供に着手したことだ。「GLOVIA smart きらら」がそれで、第一弾として会計サービスを提供開始。販売店向けの支援制度も充実させて協業関係の強化に乗り出している。サービス業や製造業など業種別で売り分けていくのか、FJMの今後の出方が注目される。
競合各社は次々とSaaS型ERPを発表している。競争の激化に伴い、販売チャネルの多角化と基盤強化がいっそう求められる。(信澤健太)

日本のSaaS市場規模予測