国内PBX(構内交換機)市場が“群雄割拠”の様相を呈している。かつてはPBXといえば電話用のツールだったが、PBXのIP化が主流になり、UC(ユニファイドコミュニケーション)など新しいシステム・サービスが登場してビジネスの幅が広がってきた。こうした状況のなかで、ユーザー企業のリプレースやワークスタイルの変革に向けたシステム導入のニーズが高まり、PBXメーカー各社がユーザー企業の奪い合いを演じるようになってきている。メーカーはSIerを中心に販社の囲い込みを進めることで、シェア確保に力を注いでいる状況だ。
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OKIネットワークス 西田慎一郎 ビジネスユニット長 | 日立製作所 高木洋 本部長 | 富士通 松村直哉 事業部長代理 |
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富士通 清水聡 プロジェクト部長 | NEC 秋本富士夫 本部長 |
新しい提案でリプレースを促進
現在、PBXはIP化されているのが普通で、メーカー各社が発売している製品のすべてがIP-PBXになっている。ユーザー企業がIP-PBXにリプレースするメリットは、2005年頃までは「IP化による通話料の削減」だった。しかし、通信事業者が回線サービスで通話料がかからないプランなどを用意していることからも、今はコスト削減のためにリプレースするケースはないといっていいだろう。そこで、ベンダー各社は新しい提案に力を入れている。
その一つがUCだ。CRM(顧客情報管理)など業務アプリケーションとIP電話を組み合わせて、ユーザー企業が攻めの戦略を展開することができるシステムを提供することでリプレースを促している。コールセンター分野に強いOKIネットワークスは、「ユーザー企業の多くは、コールセンターを売り上げアップにつながるものとして位置づけており、積極的に投資を進めている。このチャンスを逃さず、確実に案件を獲得する」(西田慎一郎・事業本部企業ネットワークビジネスユニット長)と積極的な姿勢をみせている。
一般オフィスでは、UC関連として「テレビ会議」のニーズが高まっている。しかも、「これまでは多くの拠点をもつ企業が中心だったが、拠点数が少ない企業でも導入するところが多くなっている」(日立製作所の高木洋・通信ネットワーク事業部企業ネットワーク本部長)という。また、SMB(中堅・中小企業)の間ではFMC(固定電話と携帯電話の融合)に対する関心も高まっており、「コミュニケーションツールとして提案している」(富士通の松村直哉・ネットワークサービス事業本部プロダクト企画事業部長代理)。NECでは、「ネットワークインフラの管理をベンダーに任せるクラウドが主流になる可能性が高い」(秋本富士夫・プラットフォームマーケティング戦略本部長)と捉えている。このように、PBXのビジネスは広がる可能性を秘めている。
販社とのパートナーシップがカギ
UCやクラウドなど新しい分野のシステム・サービスに関してユーザーのすそ野が広がっていることから、主要メーカーの間でユーザー争奪戦が繰り広げられることは間違いない。
現在、国内PBX市場ではNECがトップシェアを維持。次いで、日立、富士通、OKIネットワークスと続く。シェア拡大に向けて各社の認識が共通しているのは、SMBがリプレースする可能性があることから、「販社経由でのビジネスが有力」ということだ。とくに、SIerの販社経由で拡販することに力を注いでいる。
NECは、販社として3000社を確保していることを武器に、「複数の角度から総合的に攻めていく」(秋本本部長)としている。クラウドサービスをプラットフォームに据え、販社が得意な業種で販売のアプローチをかける方針だ。日立は、販社と「協創プロジェクト」と呼ぶ「拡販」「製品プロモーション」「業務改革」をテーマに協業を進めている。ほかにも、「日立グループの連携強化も図っていく」(高木本部長)という。
富士通は、有力な販社10社ほどに対するトレーニングを強化。ワークスタイルの変革やテレビ会議の導入による効果などをテーマに、「販社がユーザー企業に対してコンサルティングが行えるように支援する」(清水聡・サービスビジネス本部ネットワークサービス推進部プロジェクト部長)という考えだ。OKIネットワークスは、フロント部分のアプリケーションを開発するSIerがOKI製品をベースにインテグレーションできる環境を整備しており、「首都圏だけでなく地方など全国レベルでアライアンスを組む」(西田ビジネスユニット長)としている。
ハードウェアを売るだけではビジネスとして成熟しつつあるPBXだが、システムやサービスで提供するのであれば、まだまだ広がりがある。メーカーがシェアを拡大するうえで、販社とのパートナーシップ深耕がカギを握ることは間違いない。