ユーザー企業の大半が導入しているPBX(構内交換機)。今では、すべてのPBXメーカーが「IP-PBX」を提供しているので、ハードウェアに限っていえば「IP化」が進んでいる。ただ、課題が残る。コスト削減をテーマにハードは出回ったにもかかわらず、IP化を生かしたアプリケーション・サービスが普及し切れていないという状況がそれだ。PBXのリプレース時に、いかに新しい提案ができるか。メーカー各社のPBX関連事業を検証する。(文/佐相彰彦)
figure 1 「市場規模」を読む
市場は回復するも規模は横ばい
PBXからIP-PBXへと移り変わり、ニーズとして挙がってきたのが「VoIP(音声のIP化)」である。メーカー各社の「IP化で通話料を無料に」といったキャッチフレーズの下、多くの企業がIP-PBXとIP電話を導入した。IP-PBXとIP電話の特需は2005年頃まで続いたが、07年以降は減少傾向を辿っている。IDC Japanによれば、世界不況の影響を直接受けた09年(1~12月)の国内VoIP市場は、前年比10.7%減の840億3600万円と2ケタの減少。今年前半(1~6月)は、前年同期比3.4%減の466億4200万円という結果となっている。それでも、今年に入ってから大幅な市場縮小は回避されたとIDC Japanでは捉えており、景気回復に伴って11年以降はVoIP市場も回復。14年には923億3200万円になると予測している。ただ、気になるのはVoIP化の新規顧客が生まれてくるのかという点だ。VoIP市場は伸びるとはいえ、07年の市場規模までには達しない。しかも、IP-PBXに関してはほぼ横ばいで推移する格好だ。
国内VoIP機器市場規模の推移
figure 2 「勢力」を読む
差異化でシェア拡大
PBXの時代からビジネスを手がけるNEC、日立製作所、富士通、OKIネットワークスの国産メーカー4社をみると、IP-PBXのユーザー企業規模は、どのメーカーも大企業からSMB(中堅・中小企業)まで網羅している。ユーザー企業を最も多く獲得しているのはNEC。次いで日立、富士通、OKIネットワークスの順になっている。NECと案件で競合するケースが多いのが富士通。富士通は、競合のシェアを奪うため、パソコンやサーバーサイドからもユーザー企業に対して、「IPテレフォニー」を切り口にユーザー企業の乗り換えを促している。日立は、他社に比べてSMB(中堅・中小企業)の開拓に力を入れ、グループ会社を通じて事業を拡大しようとしている。ユーザー層は、NECと日立、富士通が一般オフィスが多い一方、OKIネットワークスがコンタクトセンター向け製品・サービスを武器に他社との差異化を図っている。ただ、コンタクトセンター分野は、外資系ベンダーのアバイアが積極的で、競争激化の様相を呈している。
主要PBXメーカー4社のポジショニング
figure 3 「チャネル」を読む
販社との協業強化で案件獲得
IP-PBXの販売面をみると、メーカー各社が確保しているのはPBX販社がメインとなっている。獲得するユーザー企業の規模は、直販は大企業、PBX販社はSMBと分けられる。しかし、最近は少し変化が現れてきた。PBX販社のなかでインテグレーションを手がけることが可能なベンダーとのパートナーシップを深めて、ハードではなくアプリケーションを切り口とした売り方を進め、大型案件を獲得しようとしている。単にPBXのリプレースを訴えるだけでは、案件を獲得することが難しいとの判断が働いているのだ。また、サーバーやプリンタなどを販売するSIerを新規販社として確保するケースもある。これは、NECや富士通が実施しており、サーバー販社とPBX販社の調整を行っているわけだ。さらに、地方の案件を獲得するため、アプリケーションベンダーをパートナーとして募り、PBX販社とアライアンスを進める動きも出てきた。OKIは、ソフトフォンなどコンタクトセンター向けアプリケーションを創造するための「COM@Will」という開発パートナー制度を設けている。直販と間接販売の比率は、売上高ベースで富士通が直販70%と間接販売30%、NECが直販70~80%と間接販売20~30%、OKIが直販45%と間接販売55%、日立がどちらも50%という状況。どのメーカーも、間接販売に力を入れていることは共通している。
主要PBXメーカーの商流
figure 4 「可能性」を読む
ワークスタイル変革の提案がカギ
IP-PBX市場が成熟期を迎えているなか、メーカー各社は事業拡大に向けて次の一手を模索している。その一つが「UC(ユニファイドコミュニケーション)」だ。メーカー各社は、通話とIP化をベースに、UC関連で「IPテレフォニー」や「遠隔会議」など、コミュニケーションの観点から製品・サービスを提供しており、今まさに花開こうとしている段階にある。IDC Japanによれば、09年の国内UC市場規模は不況の影響で前年比1.5%減の1905億6400万円、そのうちIPテレフォニー分野が前年比10.7%減の大幅なマイナスとなったが、10年以降は回復。09年から14年までの年平均成長率を4.5%と予測している。14年には、2369億円の市場規模にまで達するという。とくに、企業向けVoIPサービス市場、IP会議システム/テレプレゼンス市場、IPコンタクトセンター市場が高い成長率を維持すると分析している。従来はユーザー企業に「電話」を導入させることが中心だったPBX関連ビジネスは、ハードのIP化で通話を中心としたコスト削減をアピールするようになり、ユーザー企業が「攻めの戦略」を行うためのコミュニケーションやワークスタイルの変革を実現するものにまで進歩した。そのため、メーカー各社のビジネス領域も、今後はさらに広がることが期待される。
国内UC市場規模の推移