その他
期せずして生まれた“DC特需” 停電対策で問い合わせ急増
2011/04/14 14:53
週刊BCN 2011年04月11日vol.1378掲載
福島第一原子力発電所で発生した事故の影響を受け、関東地方は大幅な電力不足の問題に直面している。4~5月頃までは、暖房需要が減ることから電力不足はいったん解消に向かうものの、冷房需要が高まる夏に向けて、首都圏は再び深刻な電力不足に陥ることが予想されている。そんななかで、ユーザー企業は計画停電によって社内に置いてあるサーバーが使えなくなることを懸念して、停電時でも電力を確保できるデータセンター(DC)にサーバーを移す動きが活発になっている。(ゼンフ ミシャ)
中小企業でもDC利用が活発化
関東地方の電力不足問題が、サーバーをはじめとした企業内の情報システムの運用をDCにアウトソーシングする需要に大きな刺激を与えている。
ユーザー企業が保有するサーバーを運用するハウジングサービスを提供しているメーカー系DC事業者のNECの担当者は、「震災の直後から、ユーザー企業からの問い合わせが非常に増えており、これまでの問い合わせ件数は、震災前の5・6倍に増加した」と、特需の実情を表現している。なかでも、停電時にシステム運用に必要な停電前の停止や通電後の再起動など運用管理の煩雑さから、ハウジングサービスの利用を検討するケースが多いという。同社は、大規模の計画停電が予測される今年の夏に向けて、「ハウジングサービスについての問い合わせ増加の傾向が加速する」とみており、「新規顧客の受け入れを積極的に進めていく」としている。
DCの運営に強い大手システムインテグレータ(SIer)のNTTデータも、同じような傾向にある。「(計画停電の影響を受けての)ハウジングサービスへの問い合わせが増えている」と直近の状況を語った。ITホールディングスグループの有力SIerであるTISは、「多摩地区や神奈川県の企業を中心に、問い合わせが増加中だ。今後は、東京の23区の企業も同じような動きを示すだろう」と、DC需要の広がりを見越している。
また、ハウジングサービスに力を入れている大塚商会は、DC運営者のビットアイルと協業して、「問い合わせが急増しているなかで、ディザスタ・リカバリとして首都圏のユーザー企業が関西圏のDC利用を希望するケースもある」という。
大手DC事業者が口を揃えて語るDC特需の兆し。DCアウトソーシング市場の動向に詳しいアナリストは、「今回の震災や計画停電をきっかけに、DCに自社サーバーを預ける企業が間違いなく増えてくるので、ハウジング需要が拡大してくるのは間違いない。ただ、金額ベースでDC事業者にどの程度のインパクトを与えるかについては、現時点ではまだ読み取れないが……」としている。 計画停電を懸念してサーバーをDCに移す動きは、大企業にとどまらない。NECが「中堅・中小企業も含めて、この動きは加速する」と想定しているように、これまでDCの利用に対して消極的だった中小企業に広がる可能性が大きい。
日本中小企業情報化支援協議会の眞柄泰利会長(=インターネット検索サービスなどを展開する富士の代表取締役)は、「資金に乏しい中小企業は、事業継続計画に対する大規模な投資はできないが、DCを使うことによって、大きなコストをかけなくても対策を取ることができる」として、中小企業が今後、DCをより積極的に利用するという見解を示している。
SIerのTISは、中小企業のこうした動きを受けて、「オフィス設置のサーバー環境を診断する簡易アセスメントサービスや物理的な移設サービスに加え、当社のDCで提供するクラウドサービスを提案していく」と、迅速に活動を展開している。
DC特需は、DC向けに製品を提供するソフトベンダーやネットワーク機器メーカーなどの事業にも大きな影響を及ぼす。ITベンダー各社は、ここへきて明確になってきたDC特需にいち早く対応することに懸命だ。
大型DCでの使用に最適なバックアップソフトを提供するシマンテックの石井明・プロダクトマーケティングマネージャは、「計画停電の懸念や、ディザスタ・リカバリへの意識の向上などを受けて、企業がDCを利用する需要が拡大し、今後、DC事業者がますます多くなってくる」と見込んでいる。バックアップソフト事業でこれまでもDC向けのビジネスを柱の一つとしてきた同社だが、ここへきて大手DC事業者を狙った展開を本格化していく構えだ。
DCを中心としたハイエンド市場を得意とする大手ネットワーク機器メーカーのF5ネットワークスジャパンも、「計画停電などをきっかけとして、サーバーをDCに移すニーズが高まってくる」(帆士敏博プロダクトマーケティングマネージャ)とみている。同社はそれに対応して、DCに向けた製品展開に注力していくとともに、節電を余儀なくされた企業をターゲットに据えて、省電力のネットワーク機器の提供を急ぐ方針だ。
表層深層
日本のDCの大半が、東京都23区とその近郊地域にひしめいている状態だ。調査会社のIDC Japanが今年2月に発表したDCアウトソーシング市場の地域別データによると、関東地方にあるDCの2010年のシェアは72%であり、東京都23区だけのシェアでみても34%と比較的高い。また、大手SIerの新日鉄ソリューションズが2012年初頭に三鷹市に第5DCの開設を予定するなど、今後も首都圏のDC密度がさらに高まっていく見通しだ。
関東地方のDCは、現段階では、東北地方太平洋沖地震や東京電力が実施している計画停電による影響は受けていないようだ。計画停電の対象地域にあるDCでも、停電対策として自家発電装置を備えているので、通常通りに運営を続けることができる。夏に懸念される関東地方のこれまで以上に大幅な計画停電に備え、念のために、首都圏のDCを西日本に移設するということも考えられるのだが、現実的な話ではないだろう。DCを移設するには莫大なコストがかかるだけでなく、運用の体制も変える必要があるなど問題が多く、短時間で実現できることではないからだ。
計画停電の実施にあたって、東京の霞ヶ関や大手町など、「社会的に重要な地区では停電がないだろう」という話をよく聞く。その意味で東京のど真ん中にあるDCは、計画停電の対象地域が拡大されても、心配することはないといえそうだ。(ゼンフ ミシャ)
福島第一原子力発電所で発生した事故の影響を受け、関東地方は大幅な電力不足の問題に直面している。4~5月頃までは、暖房需要が減ることから電力不足はいったん解消に向かうものの、冷房需要が高まる夏に向けて、首都圏は再び深刻な電力不足に陥ることが予想されている。そんななかで、ユーザー企業は計画停電によって社内に置いてあるサーバーが使えなくなることを懸念して、停電時でも電力を確保できるデータセンター(DC)にサーバーを移す動きが活発になっている。(ゼンフ ミシャ)
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