データセンター(DC)需要が拡大している。情報セキュリティの確保やハードウェアの高集積化、SaaS/ASPなどインターネットサービスの進展によるもので、大手SIerは相次いでDCの新設や拡充に乗り出す。ITリソースのDCへの集約と最新の仮想化技術によって、次世代のクラウドコンピューティングに結びつく新潮流と捉える見方もある。今後はDCをベースとした新しい商材やサービスが加速度的に増える見通しで、ITビジネスに弾みがつくことが期待される。

商材増えてITビジネスに弾み

都市部でDC不足が深刻化

クリックで拡大 DC需要が高まっている背景には、情報セキュリティの重要性が大きくなっていることが挙げられる。デジタル化された膨大な個人情報を扱う企業が多くなり、自社内での管理が難しくなっている。高いセキュリティを確保したDCに機密情報を移すことでリスクを減らそうとする企業が増加。顧客のIT機材ごとDCに預けるケースが増え、近年では企業が集中する首都圏でのDC不足が深刻化するほどだ。

 ハードウェアの高集積化もDCへ移行する動機づけになっている。マルチコアのCPUや集積度が高いブレードサーバーの普及などによって1ラックあたりの電力消費が増え、自社内の電算室では十分に対応しきれなくなっている。過去のIT機材に比べて容積が小さくなっているにもかかわらず、1ラックあたりの消費電力は増え続ける。冷却するための空調装置も増強する必要があり、さらに大きい電力が必要になる。

 企業のIT需要は拡大し続けており、これに応えるために集積度が高い最新のブレードサーバーが必要になる。すると電力や発熱の問題から収容する場所に困り、DCへの移行が加速するという構図だ。大手SIer各社も受け入れ体制の整備に余念がない。IT機材の高集積化に対応するため、電力供給力を大幅に向上させた次世代DCの新設や増設を積極的に進める。

 90年代半ばまでは、回線とメインフレームを組み合わせて受託計算を行う電算室型のDCがまだ多かったが、その後はウェブや電子メールなどインターネット型アプリケーションに対応した新しいタイプDCが数多く開設。いわばインターネット対応型DC(iDC)の“建設ラッシュ”を迎えた。以降およそ10年が経過。既存施設では十分に対応できないケースが増えた結果、再びDCの建設・増設ラッシュが起きている。

グリーンITの要請強まる

 グリーンITの要請にも応えなければならない。顧客企業のコンピュータ室で個別にシステムを稼働させるより、DCへ集中化したほうが電力効率が高い。今は、DCそのものの省電力化も急ピッチで進む。顧客企業では、地球温暖化ガスのCO2換算で削減目標を設定する動きが活発化しており、ITシステム部門も例外ではない。グリーンITを推進する国際団体グリーン・グリッドでは、エネルギー効率を示すPUEの目標値を1.6と位置づけている。

 PUEはDC全体の電力をIT機器の消費電力で割った数値で、1に近ければ近いほど効率がよい。現状の平均PUE値は2.5-2.8といわれており、効率化すべき余地は大きい。PUE値に大きな影響を与える空調や変圧器など電気設備の一般的な耐用年数は10-15年で、過去のiDC建設ラッシュのリプレース期に差しかかっていることも、今の次世代DCへの刷新に拍車をかける。

 次世代DCを、SaaS/ASPなど新しいインターネットサービスを提供する基盤として位置づけるSIerも多い。顧客のIT機材をただ単純に預かるだけの従来型のホスティングサービスでは付加価値が低い。そこで打ち出すのがSaaS/ASP方式によるサービス型ビジネスである。

 IT機材はもとより、ミドルウェアやアプリケーションソフトもSIerが自前で取り揃え、複数の顧客にSaaS/ASP方式でITリソースを提供する。一つのリソースを複数の顧客で利用するため、利用社数が増えれば1社あたりの利用料を下げても採算が合いやすい。損益分岐点をクリアすれば、その後のユーザーの上積み分が、ほぼそのまま利益に結びつくことも考えられる。



サービス型DC本格化

 先進的なDC事業者やSIerのなかには、すでに自社DCをベースとしたサービス型ビジネスを立ち上げる動きが出てきている。

 ブロードバンドタワー(BBタワー)は、主力のデータセンター事業の付加価値化戦略の一環として、SaaS型アプリケーションサービスを拡充する。東京と大阪に計4か所の自社DCを運営するBBタワーは、ISVなどアプリケーションソフト開発ベンダーとの連携を強めることで、DCをベースとしたサービスを拡充。今年8月からセキュアな電子メールシステムをSaaS/ASP方式で顧客に提供するアプリケーションサービスを始めるなど具体的な取り組みを本格化させる。

 今後は、例えばグループウェアや経費精算、簡易な会計ソフトなどのサービスメニューの拡充を視野に入れる考えだ。

 京セラコミュニケーションシステム(KCCS)は、今年10月をめどにサーバーとストレージのオンデマンドサービスをスタートする。顧客が必要とするだけのサーバーやストレージのリソースを1か月単位で貸し出す。アプリケーションサーバーなど基盤環境を揃え、顧客にITリソースのみ提供するオンデマンド型のマネージドホスティングサービスで、受注後、最短2営業日でリソースを提供できるものだ。

 得意とするモバイル向けコンテンツ配信やインターネットのフロントエンド部分は、需要の変動が極めて大きく、DCのリソース配分の予測が難しい。このため業界に先駆けて最適なリソースをオンデマンドで提供する仮想化技術に取り組んできた。昨年までに京都の主力DCのインフラ設備を刷新。東京に2か所目のDCを開設し、東京と京都で相互にバックアップする体制も強化した。最新のブレードサーバーをベースとした仮想化システムへの対応を可能にしている。

 コンピュータリソースをDCへ集積。仮想化技術を駆使して、ITリソースを効率的に複数のユーザーでシェアするのは、Googleなどが推し進めるクラウドコンピューティングの考え方と通じる。SaaS/ASP型のITサービスやクラウド型のシステムは企業の情報システム戦略にとって不可欠な要素になりつつある。同時に、SIerにとっても収益の重要な柱の一つであり、今後ますますDCの重要性が高まりそうだ。

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