3月11日(金)午後2時46分、宮城県沖で発生したマグニチュード9.0の巨大地震は、東北地方を中心に東日本の広域を襲った。観測史上最大の大地震は、多くの死者・行方不明者を出し、阪神淡路大震災を上回る規模となった。かつてない危機を乗り越えるために、本格的な人命救助と復興作業が始まっている。そして、IT企業も被災者の力になろうと、支援に向けて動き出した。(木村剛士)

 「把握している被災件数621件のうち、367件は対応が完了した。地震発生から全力で復旧作業に取り組んでいる」──。3月14日午後2時、全国にサポート拠点と人員を抱え、IT機器の保守・運用サービスを手がける日立電子サービス(日立電サ)から、こんな力強いコメントをもらった。状況は刻一刻と変わり、15日11時45分現在で被災件数は763件と増加したが、対策完了も489件に増えている。現地での奮闘ぶりが目に浮かぶ。

 日立電サは地震が起きた3月11日、今回の大地震に関連する対策を講じるための専門組織を立ち上げた。日立電サは、本社を含めてグループで総勢約8500人の従業員を保有。それらのスタッフが全国に散らばっており、被災地にもいた。被災地に配属されていた従業員の安否確認を進めながら、同時に顧客へのサポート対応を現在も行っている。広報担当者によれば、自社の安否状況について「14日14時時点では大きな物的被害はなく、震度の大きな地域に関連する7650人が全員無事という確認が取れている」という。復旧作業をスピーディに進めるため、日立電サは14日に約50人の応援スタッフを現地に派遣した。

 日立電サとともに、全国に拠点・人員を配置している保守サービス会社であるNECフィールディングも、従業員の安否確認を進めながら、顧客対応に奮闘している。同社では、盛岡市にある6営業所・サービス拠点のうち、4拠点が壊滅状態に陥った。そんな状況でも、被災して相談・問い合わせがあった顧客に対してのサポートに力を注ぎ、「14日には現地スタッフの応援のために、35人を仙台地区に送り込んだ」(広報担当者)という。

 保守サービス会社は全国に拠点・人員を配置しており、どの地域にいるユーザー企業・団体でも全国標準の密着サポートを受けられるのが特徴だ。ユーザー企業・団体が真っ先に助けを求める対象ともいえる。それだけに、こうした状況でも手を休めることなく、顧客対応に力を注いでいる。

 国内最大のSIer、NTTデータの山下徹社長は3月14日、社員向けのメッセージとして「NTTデータグループの底力が社会から求められている」と訴えたという。複数のIT企業は、被害を受けた地域と人を救おうと、被災直後から動き始めた。東芝やソニーなどの大手コンピュータメーカーが義援金を寄付することを決めたほか、自社製品・サービスを復興に活用してもらおうとする取り組みが、複数の企業で始まった。

 日本IBMは地震発生日の2日後、情報を発信するシステムが必要になるとみて、地方公共団体や非営利活動団体向けに、同社のクラウドサービスを3か月無償で提供する復興支援サービス「東北地方太平洋沖地震対策 IBM Smart Business Cloud 無償提供プログラム」を開始した。

 そのほか、クオリティソフトは3月14日、東日本の電力不足を低減するための策として、オフィスの節電対策ツールを、4月30日まで無償提供。細かな条件を設けることなく、同社の専用ウェブページから、ほぼ誰でもダウンロードできるようにした。

 テレビ会議システム開発・販売のITベンチャーであるブイキューブは、被災した地域に本社・支社がある企業に対して、ウェブ会議サービスを無償提供している。地震発生の翌日の12日に開始し、すでに数十社のユーザーが利用中という。情報伝達手段が乏しくなった現地での状況把握を支援している。ここで言及したIT企業の取り組みはほんの一例である。支援策を打ち出しているIT企業は、企業規模を問わず、日に日に増えており、枚挙にいとまがない。

 被災地では、現在、人命救助と被災者の生活確保が支援の中心で、社会インフラを担うIT企業以外の出番は、もう少し先になるかもしれない。ライフラインの確保が最優先で、情報インフラの再整備は二の次であることは間違いない。ただ、情報システムやネットワークが再整備されなければ、本当の復興とは呼べない。それらを提供するIT企業が果たすべき役割は大きい。被災者に対して、どのような支援ができるか、それを考えて準備するのは、決して早すぎるということはない。

被災者に対するIT企業の主な支援策