翻訳サービスの川村インターナショナル(川村みどり社長)は、ソフト開発のテンダ(小林謙代表取締役)と営業支援サービスのアズ(松田元代表取締役)が共同企画した商談アポイント取得サービス「アポレンジャー」を2010年末に導入した。このサービスを利用したことで、新規の商談アポが約5倍に増加したという。導入を決めた理由は、ITだけでなく、営業業務のアウトソーシングを組み合わせたユニークなモデルであったことだった。
川村インターナショナル
会社概要:1986年設立の翻訳サービス会社。翻訳品質の高さにこだわり、それが評価されて、著名な企業が顧客になっている。米ヒューレット・パッカード(HP)と独SAPは、グローバル翻訳認定パートナーとして契約している。
システム提供会社:テンダ、アズ
サービス名:商談アポイントメント取得サービス「アポレンジャー」
「アポレンジャー」の利用の流れ
川村インターナショナルは、「独自の品質管理システムを活用した翻訳品質の高さが強み」(川村社長)としており、営業戦略として、大手企業をメインターゲットに据えている。小さな商談を複数の企業から獲得するよりも、少数でも特定の大手企業から多くの翻訳プロジェクトを受注したほうが、高品質の成果物を提供できるし、結果的に利益率が上がるからという。「同じ翻訳でも、顧客の業種・業態、企業によって求められるスキルや知識は異なる。業界や各企業特有の事情を知っているかどうかが、手間の多寡と品質の高低を左右するポイントになる」(森口功造・新規事業チームマネージャ)。

川村インターナショナルの川村みどり社長(左上)と立花岳志シニアマネージャ(中央)、森口功造マネージャ
事業を拡大するうえで、常に課題となっていたのが新規顧客の獲得だった。営業戦略上、闇雲に営業をかけるのではなく、長期的につき合える特定企業に限定して提案したいという基本的な姿勢がある。だが、そのような企業に、商談のアポを新規に取るのは容易ではない。森口マネージャによれば、「当社の営業担当者は、既存顧客に対する提案は得意だが、新規の企業に対してアポを取り付けるのは比較的苦手」という。新規顧客の獲得のためのスタッフは3人だけという実情もあって、打開策を模索していた。
そんな折、テンダが「アポレンジャー」を企画・販売しているのを知った。「別の開発案件で、川村インターナショナルに通っている時、たまたま『アポレンジャー』のことを知っていただいて、興味を抱いてもらった」(テンダの大久保卓・エンタープライズソリューション事業本部CRM室室長)という。

「アポレンジャー」を共同開発したテンダの大久保卓室長(左)とアズの工藤拓矢部長
「アポレンジャー」とは、顧客に代わって新規のアポを取り、それをSaaS型のグループウェアに入力して顧客と共有するサービス。ITとアポ取得の代行を組み合わせたサービスで、テンダがグループウェア「TimeKrei ASP」を提供して、アズがアポ取得を代行している。仕組みは、まず顧客の営業担当者が、新規のアポを入れて欲しい時間をグループウェア上に入力。アズの担当者は、その時間に合わせてアポを取得する。アポが入れば、グループウェアに詳細を入力して、営業担当者がその情報をみて、商談に出かけるかたちだ。
両社が「2010年の初夏から共同企画」(アズの工藤拓矢・人財アウトソーシング事業部部長)して、その年の9月に発売した。川村インターナショナルは、「利便性が高く営業効率が上がる」(立花岳志・業務統括シニアマネージャ)と判断。取得したアポ数に応じて課金するモデルで、基本料金は月4万2000円という月額料金制にも魅かれ、導入を決めた。2010年の年末から利用し始めた。
導入後、3か月ほどが経つが、新規顧客に提案するためのアポの数は、以前に比べて約5倍に急増した。また、「社内の営業担当者も苦手な新規アポを行わずに、提案業務に集中できるので、モチベーションも上がっている」(森口マネージャ)という効果も出ており、川村インターナショナルの満足度は高い。
森口マネージャは、「営業担当者の営業効率を把握できる機能など、『TimeKrei ASP』がもつ豊富な機能をまだまだ活用し切れていない。今後はもっと多くの機能を利用できるようにして、営業効率をさらに高めたい」と意気込みを語った。(木村剛士)
3つのpoint
・苦手な新規顧客のアポ取得を“丸投げ”できる
・ITと業務代行を組み合わせたサービスである
・利用料金が月額料金制であること