セキュリティ製品・サービス販売のセキュアヴェイル(米今政臣社長)が、新たなチャネルビジネスモデルを考案し、協業相手を募っている。そのモデルとは、「ユーザー企業にSaaSを提供したいITベンダーに対して、セキュアヴェイルがそのためのIT基盤をSaaSで提供する」というもの。情報システムの運用監視サービスを、ITベンダーが手軽に手がけられるようにする戦略だ。
セキュアヴェイルは設立して10年、年商は10億円弱のITベンチャーだ。独自開発のソフトを用いた情報システムの運用・監視代行サービスに強く、複数のビックネーム企業を顧客として抱える。2006年には大阪証券取引所ヘラクレス(現ジャスダック)に上場した。
今回の試みは、主要商圏の大手企業だけでなく、地方の中小企業にアプローチするために考案した戦略だ。ビジネスを急成長させるためには、中小企業もターゲットにする必要があると判断。「全国の膨大な中小企業に自社だけでアプローチするのは不可能」(米今社長)と考え、ITベンダーとの協業体制を構築するに至った。
今回のモデルは、簡単にいえば、従来からセキュアヴェイルがユーザー企業に販売しているシステムの運用・監視代行サービスを、ITベンダーが自社ブランドで展開できるというもの。セキュアヴェイルは、この考えに賛同してビジネスを展開したいと考えるITベンダー(パートナー)には、サービスを提供するためのIT基盤を月額課金制で提供。パートナーはそのITインフラを活用して、ユーザー企業に月額課金制でサービスを提供する。
ITベンダーがセキュアヴェイルに支払う料金は、初期費用1万円とノード(監視するハードウェア)の数に応じて支払う従量課金制の運用費用になる。従量課金制で支払う金額は、1ノード月額わずか1500円。初期費用・運用費用のいずれも破格の低価格だ。パートナーがユーザー企業に販売する価格は、パートナーが自分で決められる。ビジネスの拡大状況に応じて支払うコストが変わるので、パートナーはリスクが小さく、運用・監視代行サービスを始める決断がしやすい。セキュアヴェイルは、気軽に参加できるように可能な限り敷居を下げることにこだわった。
この戦略を推進すれば、セキュアヴェイルが自社で営業できるターゲットは、当然ながら減少する。利益率も下がる。だが、システムの運用・監視の必要性を感じる中小企業は増えており、一気呵成に攻めるためには、パートナー網を構築することが最適と判断したわけだ。10月下旬に、独自に作成した全国のITベンダーリストに基づいて案内を開始。約1か月で140社のITベンダーが名乗りを上げたという。11月にはセールスツールや技術資料などを閲覧できる専用のウェブサイトを開設する予定で、さらにパートナー募集活動を活発に行っていく。
大手企業向け事業とはまったく異なる戦略をとったセキュアヴェイル。大手ベンダーではなかなか決断しにくい戦略と価格設定だ。ベンチャーという機動力を生かして、中小企業向け従量課金ビジネスを成功させようと、チャレンジしている。(木村剛士)