医業コンサルティングや調剤薬局の運営を行う総合メディカル(金納健太郎社長)。全社で策定したITビジョンをもとに、日本マイクロソフトが開発する顧客関係管理(CRM)「Microsoft Dynamics CRM」を導入した。CRMを駆使し、営業活動の強化と顧客満足度の向上に向けて取り組んでいる。
総合メディカル
会社概要:1978年、総合メディカル・リースとして設立。1989年、総合メディカルに商号変更。2001年、東京証券取引所市場第1部に株式上場。医業コンサルティングや調剤薬局の運営を手がける。
サービス提供会社:プライスウォーターハウスクーパース
プロダクト名:日本マイクロソフト「Microsoft Dynamics CRM」
総合メディカルが採用した「Microsoft Dynamics CRM」
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総合メディカル 松尾俊和 執行役員 |
総合メディカルは、2010年度(11年3月期)の連結売上高が727億8900万円で、過去5年の間に20%伸びた。商品・サービスの種類や拠点も増加。従業員数は1.4倍となった。一方で、従来のスクラッチベースの顧客関係管理(CRM)は営業の現場からの不満が多く、顧客満足度の観点からも問題を抱えていた。こうした事情から、松尾俊和・執行役員IT戦略部部長は、「IT基盤の整備・構築が急務だった」と話す。
09年10月、まずは営業業務の現状を分析し、その課題を洗い出した。分析結果をもとに、ITビジョンを策定。10年1月、システム要件の優先順位と内容の大綱づくりに着手し、同年4月に提案依頼書をシステムインテグレータ(SIer)に提示した。5月には、「Microsoft Dynamics CRM」の採用を決定し、6月に構築を開始。11年4月、本稼働にこぎ着けた。
「Dynamics CRM」をベースにしたCRMの名称として、社内公募のなかから「メディカルテ」を採用した。「総合メディカルの顧客カルテシステム」の略称で、営業効率を上げるための道具である「メディカルの手」という意味も込めている。
プロジェクト遂行にあたって発足した顧客カルテチームは、(1)関係者の共通認識の醸成、(2)営業現場の意識の尊重、(3)最初から欲張らずに育成していくシステムにする、(4)文書化の習慣を醸成、(5)プロジェクトマネジメント・オフィス機能を有効に発揮し、プロジェクトのQCD(品質、価格、納期)をコントロールの5点を重視した。意見のすり合わせにあたっては、「2か月間で二十数回もミーティングを行った」(松尾執行役員)という。
パッケージの選定条件には、代表的なものとして、スケジューラやメールシステムとの連携、カスタマイズ・拡張の容易性、ビジネスモデルへの適合性、営業部門の納得感などが挙がった。これらに合致したのが、日本マイクロソフトの「Dynamics CRM」だった。プロトタイプ開発方式を採用し、顧客カルテチームと開発ベンダーの間で週2、3回のセッションを通じて要件を精査した。
プロジェクトのなかで、「Dynamics CRM」と親和性のある「Microsoft Exchange Server」や「Microsoft SharePoint Server」などのマイクロソフト製品を相次いで導入することを決めた。「メディカルテ」のユーザー規模は、「Dynamics CRM」のオンプレミス版で300ライセンスとした。自身でデータ登録や修正作業をしないユーザーについては、アクセス権限を絞ったLimited CALを購入し、コストを節約した。
動き出した「メディカルテ」では、すべての操作を日頃使い慣れた「Microsoft Outlook」の画面からできるようになった。加えて、Active Directoryと組み合わせてシングルサインオンを可能としている。松尾執行役員は、「現場の意見として、『何が何でもやってくれ』と、社内の他システムと連携することを強くいわれていた」と明かす。「Dynamics CRM」は、こうした要望に応える製品として、「『Microsoft Office』製品の延長線上で使えるし、管理しやすい」と評価する。
導入コンサルティングを手がけたプライスウォーターハウスクーパースは、「各事業の特性を理解したエース級のメンバーが参画したこと」や「全員の投票で決めた」といった点を成功要因として挙げている。(信澤健太)
3つのpoint
・日本マイクロソフト製品との高い連携性
・機能項目の追加の容易さ
・使いやすさ、わかりやすさ