トヨテックは、有力SIerであるコアのIT資産管理システム「ITAM(アイタム)」を採用した。トヨテックは東京都内のトヨタ販売店などを擁するトヨタアドミニスタグループの一員で、販売店の情報システムの開発・運用を担うシステムエンジニアリング会社である。パソコンやプリンタといったIT資産を、これまでは表計算ソフトのExcelで管理してきたが、ITAMを活用することで管理の効率化を図るとともに、ライフサイクル管理(LCM)部分をコアと共同で新しく開発した。
トヨテック
会社概要:トヨタ系列の自動車販売店など約300店舗の情報システムの開発・運用を担うシステム会社。親会社は東京都内のトヨタ販売店などを統括するトヨタアドミニスタである。
サービス提供会社:コア
プロダクト名:ITAM(アイタム)、ITAM LCM
ITAM LCMを活用したIT資産ライフサイクル管理業務フロー

コアの宮崎周平シニアコンサルタント(左)と蛯原孝之マネージャー
トヨテックはトヨタ自動車系列の販売店などが使う情報システムを担う一環として、パソコンやモニター、プリンタといったIT資産を管理している。販売店は東京都内に計8社およそ300店舗あり、IT資産の管理件数は2万件近くに達する。従来は表計算ソフトのExcelで管理していたが、「管理の効率化という点で限界があった」(増田重之・ソリューション事業部事業開発グループマネージャー)として、IT資産管理のITAMの採用を決めた。
Excelでの最も大きな問題点は、販売店などから寄せられるIT資産の調達依頼から始まり、ITベンダーへの発注→納品→保守→修理対応→廃棄に至るまでの一連のITライフサイクルにかかる情報の管理が容易ではないことだ。トヨテックでは、担当者一人でExcelを管理しているわけではなく、複数人がExcelのデータを参照しながら自分が担当する仕事をこなす。「対象となるIT資産が今、どの販売店のどの部署に、どのような状態であるのかの把握に手間をかけていた」(同)というのが実情だった。

トヨテックの大西祐一取締役(左)と増田重之マネージャー
そこで取り組んだのが、ITAMにライフサイクル管理(LCM)機能を追加することだった。業務フローを精査し、IT資産管理にあたるロール(役割・部門)とタスク(業務)を把握。担当者が自分の業務に必要な情報を瞬時に抽出できるようにするものだ。ITAMにはワークフロー機能がついていたが、ロールとタスクで情報を捉える機能を強化する狙いから「トヨテックからLCMの話があった2009年秋の早い段階から共同開発する方向で決まった」と、コアでITAM事業を担当する宮・周平シニアコンサルタントは話す。IT資産管理に関する帳票もこれを機に大幅に削減。販売店とのやりとりやトヨテック社内で使う帳票は20~30種類あったが、LCM適用時には10種類程度に整理統合し、ITAMの構成管理データベース(DB)での効率的な一元管理を実現した。
LCMは、ITAMの属性や関連性を紐づけて管理する構成管理DBから、ロールとタスクに基づいて必要な情報だけを抽出する。例えば、トヨテックの出荷担当者がパソコンをユーザーである販売店へ出荷するときに知りたい情報は、「今日、何をどこへ出荷すべきであるのかが重要。担当者にとって、昨日や明日の情報は無用のもの」(コアでITAMを担当する蛯原孝之・開発グループマネージャー)。こうしたLCM機能によって、単にITAMのDBでIT資産を管理するだけでなく、ライフサイクルに関連する作業全般にわたって効率化を実現している。
要件定義と開発に8か月ほどかけて、2010年11月、トヨテックにおけるLCM機能を実装したITAMが本番稼働。これとほぼ同時期に、コアは「ITAM LCM」として一般顧客向けの販売を始めている。システムエンジニアリング会社のトヨテックは、「東京地区以外のトヨタ販売店でも同じようなIT資産管理の需要があることから、横展開を進めていく」(大西祐一取締役)と、コアと共同開発したLCMのグループ向け展開を手がけることで、開発コストの低減に努める考えだ。(安藤章司)
3つのpoint
・ロール(役割)とタスク(業務)に基づくLCMを実現
・「必要な情報を必要なだけ」抽出して作業を効率化
・共同開発の方式を採ることでコストを削減