富士通(山本正已社長)と日本マイクロソフト(樋口泰行社長)は、サーバー仮想化をテーマにしたイベントを共催した。中堅・中小規模のユーザー企業を対象に、情報システムを仮想化するメリットと、その方法などをわかりやすく説明する内容。富士通と日本マイクロソフトの仮想化事業担当者だけでなく、富士通のパートナー企業も自社の仮想化ソリューションをアピールした。(取材・文●佐相彰彦/木村剛士)
「Hyper-V」は中小企業に浸透
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| 富士通の出海修二・Hyper-V仮想化センター長 |
プログラムは、富士通と日本マイクロソフト、富士通のパートナー企業4社の担当者が登壇する複数セッションで構成。富士通と日本マイクロソフトは、日本マイクロソフトの仮想化技術「Hyper-V」の利点について説明し、富士通のパートナー企業は「Hyper-V」を使ったITソリューションのユーザー事例を紹介した。
富士通の出海修二・Hyper-V仮想化センター長は、「富士通のHyper-Vをオススメする理由」をテーマに講演。まずx86サーバーの仮想化プラットフォーム(ソフト)別構成比について「『Hyper-V』が2009年以降、出荷台数・金額ともに40%以上を占めている」と話し、「Hyper-V」を活用した仮想化ソリューションが好調であることをアピールした。また、小規模システムを仮想化するプロジェクトが急増していることにも言及し、「1~4台のサーバーで構成するシステムが、全案件の半数を超えている。『Hyper-V』は小規模システムを仮想化するのに最適」とPRした。
中小企業のシステムで仮想化の案件が増えているのは、「東日本大震災によって事業継続や災害対策への要望が高まっているため」という。2011年上期には、事業継続や災害対策に関する案件が、前年同期に比べて30%増加。出海センター長は、「『Hyper-V』がユーザー企業のニーズに応えることができていることもビジネスが好調な理由」と状況を説明した。
富士通は、仮想化ビジネスを展開するにあたって「Hyper-V」を積極的に活用している。08年に「Hyper-V仮想化センター」を設立したり、米マイクロソフトと技術的協業関係を結んだり、世界的にマイクロソフトとの関係を強めている。富士通のx86サーバー「PRIMERGY」は、すべてのモデルが「Hyper-V」に対応済みだ。出海センター長は、「直販ビジネスだけでなく、全国のパートナー企業を支援する体制を築いている」と、仮想化事業を手がける体制が他社よりも整っていることに自信を示した。
「今後は、クラウドサービスを組みわせた導入が進むだろう」と分析しており、仮想化とプライベートクラウドのインフラ環境を安心・安全に導入することができる統合パッケージ「Cloud Ready Blocks」を紹介。「現段階で、すでに半数以上の案件が中小規模システムになっている。今後も、ますます中小企業に仮想化が普及するだろう」と締めくくった。
富士通のパートナーが事例を説明
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| 日本マイクロソフトの野中智史・サーバープラットフォームビジネス本部エグゼクティブプロダクトマネージャー |
出海センター長のセッションに次いで富士通のパートナー企業が登場し、仮想システムのユーザー事例を紹介した。登壇したのは、ソレキア、大興電子通信、都築電気、扶桑電通といった富士通の代表的なパートナーの担当者だ。都築電気は、業種・業務ごとに最適化して導入コスト・期間を削減・短縮する自社のソリューションパッケージ「kitFit」と、「Hyper-V」を組み合わせた導入事例を説明した。このほかの3社も「Hyper-V」を活用したSMB向けの仮想化ソリューションを紹介し、「Hyper-V」の優位性をアピールした。
最後のセッションでは、日本マイクロソフトの野中智史・サーバープラットフォームビジネス本部エグゼクティブプロダクトマネージャーが登壇し、「クラウド時代の最新仮想化テクノロジー」をテーマに講演。「サーバーの仮想化とは何か」といった内容から始め、システムを仮想化したことがない中小企業でも理解しやすいプレゼンテーションを展開した。
野中エグゼクティブプロダクトマネージャーは、節電と省スペース化、管理業務に費やす時間の削減など、小規模システムでも仮想化する価値はあることを力説したうえで、「Hyper-V」を訴求。「x86サーバー用の仮想化ソフトでは、『VMware』を抜いて『Hyper-V』がトップになった」。また、「中小企業の仮想化に対する関心は非常に高まっているが、ユーザーが不安を感じているのも事実。『安定性・信頼性』『費用対効果』『障害時の切り分け』をとくに心配している。だが、『Hyper-V』と運用管理ツールの『System Center』を組み合わせれば、その問題を解決できる」とアピールした。
会場に集まったユーザー企業と一部のSIerは、およそ4時間半という長時間のイベントにもかかわらず、最後まで熱心に耳を傾け、仮想化に対する関心の高さを改めて印象づけた。