 | [岩手県]地場建設会社に在庫管理システムを販売 |
独自開発の貸付金管理システム「リベルテ」や、完全ウェブ型統合基幹業務システム「GRANDIT」などを販売するアイディーエス。売り上げの90%以上を県外で稼ぐ。しかし、「30年ほど前にこの地で創業した。岩手県に本社を置く企業ならではの取り組みができるはず」と、菅原達哉社長はずっと自問してきたという。
震災後に、新規事業企画室を立ち上げた。菅原社長は、「クラウドと震災復興をキーワードにして、新しい事業を模索しているところ」と明かす。
現在、事業化に向けて努力しているのが、復興に携わる建設事業者向けの在庫管理システムの販売だ。復興が進む東北地方では、宮城県が発注する石巻ブロックのがれき処理プロジェクトを、鹿島建設や清水建設といったスーパーゼネコンのジョイントベンチャーが落札している。これから本格的な復興特需が見込める状況で、いわば建設バブルに沸く気配があり、販売の拡大を期待できる。
菅原社長は、「資金力に乏しく、在庫管理がしっかりできていない建設事業者の融資が通りやすくなるようにしてほしい、と銀行から声がかかった」と経緯を語る。地元建設業者にIT利活用を促している。もともと同社は、ある企業の物流関連システムの構築を一手に引き受けており、在庫管理は得意分野だ。この強みを生かして、建設事業者向けにシステムの提案活動に乗り出した。ところが、「建設事業者が忙しすぎて、システムの導入にまで至らない。感触はあるのだが、受注にまでは結びついていない」と、ERP事業部の小原昭彦・事業部席担当部長は悩みを吐露する。被災地域での営業活動は難しいのが実情だ。
このほか同社が関心を示しているのが、日本ユニシスの防災情報システム「SAVEaid」の販売だ。日本ユニシスの出資を受けていることもあって、声がかかっているという。「SAVEaid」は、地方自治体向けSaaS型危機管理情報共有システムで、今後、地方自治体での需要が期待できる。2月2日には、さいたま市が採用を発表した。クラウド関連では、すでに提供実績があるクラウド版「GRANDIT」の販売も推進する方針だ。
 | [福島県]経験を生かしてBCPを全国提案 |
福島県の多くのITベンダーは、相互の連携を強化すると同時に、新しい事業分野の開拓に動き始めている。震災発生を境に、従来型のビジネスモデルが揺らいできたためだ。この状況下で、新期事業の拡大は、ITベンダーにとって生き残るために不可欠な取り組みになっている。
これまで自治体向けのシステム開発を主な事業としてきた福島情報処理センターの西方春三郎常務は、「これから、BCPビジネスを事業構成の柱にしていく」という。今年3月には、最大300ラックを収納できる自社DCを着工。12月までの完成を目指し、年内にハウジングなど各種DCサービスを開始する計画だ。
同社は震災発生直後から、全国のユーザー企業を相手にBCPの提案を積極的に行ってきた。西方常務は、「このところ、自治体だけでなく、民間企業からも多くの引き合いがある。例えば東京の商社のある部門には、バックアップのソリューションを導入した実績がある」と、新規事業が軌道に乗る兆しがみえてきたと話す。
システム連携の需要が増大
福島県は、雇用促進を目的に県内に企業誘致を図り、コンタクトセンター(CC)やDCを対象にした補助金制度を設けている。福島情報処理センターも、県庁に対してこの申請を出したところだ。補助金の支給がかなえば、新しいDCでおよそ10人の従業員を新たに採用する方針だ。
同社はDCをベースとして、今後、福島第一原発の避難区域から逃れてきた住民の情報を、自治体がクラウド・サービスを利用して把握できるようにするサービスなど、クラウド型製品の開発・提供を検討する。
震災によって県内で需要が高まっているのは、複数システム間の連携だ。コンピューターシステムハウス(CSH)の薮内社長は、「仙台の食品メーカーをはじめ、多くのユーザー企業からシステムの連携と標準化についての相談を受けている」という。これを受けて同社では、ユーザー企業が求めるアプリケーションを迅速に開発するシステムエンジニア(SE)の育成に力を入れている。薮内社長は「これまでJavaを勉強させていたSEに、今後はアプリケーション開発を学ばせて、アプリケーションを中心に事業を展開するベンダーにしていきたい」と、ビジネスモデルの新しい展開に意気込みを示している。
一方、ユーザー企業で注目を浴びているスマートデバイスに関して、県内の多くのITベンダーは、これをどうソリューションに活用するかを模索している。福島情報処理センターの西方常務は、「例えば、医療分野などでさまざまな活用が考えられるが、現時点では具体的な提案はしていない」という。CSHの薮内社長は、「スマートデバイスは媒体として魅力的だ。しかし、企業データの安全を守る観点からは、課題がある。セキュリティを担保できるかたちで提供できれば、スマートデバイスは有力な商材だ」と、従来の商材とは異なる市場拡大の兆しがみえる新たな領域に挑戦する考えだ。