都市開発や不動産事業などの森ビル(辻慎吾社長)は、従業員が使うパソコンの調達・廃棄とトラブル対応にかかる手間・費用を減らすために、ヤマトシステム開発(皆木健司社長)の「PCライフサイクルサービス」を導入した。新たに購入するパソコンのキッティングから配送、既存パソコンの故障対応やトラブル解決、不要パソコンの廃棄までを請け負うサービスで、森ビルは導入後に約40%の費用を削減した。約2200台にも及ぶ保有パソコンの運用は、丸ごとアウトソーシングするほうが好都合と判断し、成果に結びつけた。
森ビル
会社概要:都市開発やオフィスビル・商業施設などの不動産賃貸・管理事業を行うディベロッパー。賃貸ビル数は113棟(2011年4月時点)に及ぶ。設立は1959年で従業員は約1400人。売上高は2091億円(2011年3月期)。
システム提供会社:ヤマトシステム開発
サービス名:PCライフサイクルサービス
PCライフサイクルサービスのメニュー
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森ビル 浅野英一郎課長 |
森ビルは、30人ほどの情報システム部門が、全社の情報システムの企画・運用業務を担っている。情報システム部運用グループに籍を置く浅野英一郎課長のここ数年の悩みは、“パソコン周りの仕事”だった。森ビルが保有(稼働)するパソコンの台数は、およそ2200台とかなり多い。従業員からは「壊れたので、新しいのが欲しい」「インターネットにつながらない」「ソフトの操作方法がわからない」といったパソコンに関する問い合わせが、毎日のように情報システム部門に入るという。
森ビルは、情報システム部門をこうした生産性の高いとはいえない仕事から解放するために、以前からトラブル解決の業務を外注していた。4年前まではアウトソーシング企業のスタッフを10人常駐させていたが、そのコストを問題視し、2年前に6人削減して4人にしている。そして昨年の夏頃には「もっとコストを低減することはできないかと検討し始めた」(浅野課長)という経緯がある。
浅野課長が求めていたのは、コスト削減だけではなく、ヘルプデスク(トラブル対応)サービスに加え、パソコンの調達と配送、廃棄を任せることができる外注先だった。アウトソーシングしていたとはいえ、すべて外注とはいかず、新しいパソコンの手配は自社のスタッフが行って、「キッティングには1~2人を費やしていた」(浅野課長)状況だった。配送作業にも手間がかかっていた。浅野課長は、これらの業務を、コストを削減しながらも、外部に出せないかと考えたのだ。ウェブサイトで情報を収集して、ITベンダーやリース会社など5社ほどの企業と直接会って検討した結果、ヤマトシステム開発を選んだ。その理由について浅野課長は、三つ挙げている。「まず費用面。他社よりもリーズナブルで従来よりも約40%のコストを削減できること。二つ目が短期間での配送。パソコンが壊れた場合、従業員は新しいものをすぐに欲しがる。すばやく現場に届けてくれるのは魅力的だった。三つ目は(ヤマトの)ネームバリュー」。ヤマト運輸などを傘下に抱えるヤマトホールディングスグループのSIerであることも、選定のポイントだったという。
今回の商談をまとめた森ビルの営業担当者であるヤマトシステム開発のPCライフサイクル事業部・今井悠氏は、「浅野さんに評価していただいた『注文を受けてから届けるまでのスピード』と、森ビルが保有する遊休パソコンを一時預かる倉庫をもっていることも提案の際に差異化できるポイントだと思って、ていねいに説明した」という。大手運送会社がグループにいることの強みと、その情報システムを企画・運用することで得たノウハウも生きたようだ。リース会社や一般的なSIerにはない特徴をうまく説明し、商談を勝ち取ったわけだ。今井氏の上司であるヤマトシステム開発の佐野達史事業部長は、「IT資産管理など、当社がお手伝いできることはまだありそうだ。引き続きサポートしていきたい」と意欲を示しながら、今回の成功事例に顔をほころばせた。(木村剛士)

ヤマトシステム開発の森ビル営業担当者である今井悠氏(左)と佐野達史事業部長
3つのpoint
・パソコンをすばやく手配できるスピード性
・約40%のコスト削減に寄与する価格
・ヤマトグループのネームバリュー