大手通信キャリアのKDDI(田中孝司社長)は、個人・法人向けの両分野で、スマートデバイスの販売に力を注いでいる。同社は、昨年、Androidの最新版「3.0」を採用したタブレット端末を社内に導入し、営業活動などの業務に活用している。KDDIが、スマートデバイスの安全な利用に欠かせない管理ソリューションとして使っているのは、許可した端末だけを社内ネットワーク(NW)に接続する認証サービス「サイバートラスト デバイスID」である。
KDDI
会社概要:1984年設立の大手電気通信事業者。「au」ブランドで個人向け事業を展開するほか、法人向けのICT(情報通信技術)サービス事業を手がけている。2011年3月期の売上高は3兆4345億円。従業員数は1万8418人。
サービス提供会社:サイバートラスト
プロダクト名:サイバートラスト デバイスID
モバイル端末を安全に利用できるシステムのイメージ
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サイバートラスト 最高技術責任者 北村裕司氏 |
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KDDI ソリューション営業本部 営業推進部 高田聡課長 |
KDDIは、2010年の秋、スマートデバイスの事業展開の拡大に取り組むと同時に、スマートデバイスを自社にも導入し、業務に活用することを検討し始めた。スマートデバイスは、顧客情報など、パソコンのようにあらゆるデータを簡単に扱うことができる反面、紛失や盗難の際に機密情報漏えいのリスクを伴うので、KDDIは「セキュリティはどうするか」について、社内で議論を繰り返してきた。同社がスマートデバイス向けのセキュリティ対策を講じるにあたってとくに重視したのは、許可した端末だけを社内ネットワークにアクセスさせる仕組みの導入だったという。
KDDIは、MDM(モバイル端末管理)ベンダー各社のソリューションを検討した結果、サイバートラストの認証サービス「サイバートラスト デバイスID」の採用を決定。2011年6月、Android 3.0搭載のタブレット端末を2800台導入するとともに、全端末に「サイバートラスト デバイスID」を入れた。このサービスは、ユーザー企業が許可した端末に証明書を登録し、その認定書がある端末に限って、社内ネットワークへの接続を可能とするもの。私物端末や許可していない端末は社内ネットワークにアクセスできないので、スマートデバイスを安全に業務に活用することができる。
KDDIのソリューション営業本部営業推進部の高田聡課長は、「『サイバートラスト デバイスID』の導入を決断したのは、サイバートラストが当社の要望を受けて、短時間でAndroid 3.0への対応をしてくれたからだ」と語る。KDDIは、Android 3.0を採用している最新のタブレットを業務端末として選定していたが、導入の時点で、Android 3.0対応の認証ソリューションはまだ存在せず、KDDIのニーズに合わせてシステム仕様の変更に応じるベンダーも少なかったそうだ。一方、サイバートラストは、KDDIから「Android 3.0対応を前提に発注したい」との打診を受けて、「全力を挙げて、1週間でAndroid 3.0への対応を実現した」(サイバートラスト最高技術責任者の北村裕司氏)という。迅速にKDDIの要望に応えて受注につなげたわけだ。
KDDIでは今、タブレットを活用し、データ化した製品カタログやプレゼンテーション資料を営業先で呼び出したり、外出中にメール対応やスケジュール調整ができるようになっている。さらに、タブレットを導入した直後の昨年の夏には、節電対策の一環として、一部の社員の自宅勤務制度を実施し、自宅から会社のシステムに入ることができるタブレットを在宅勤務の環境づくりに生かした。
KDDIの高田課長は、「セキュリティの観点からすれば、在宅勤務の社員に社内システムにどこまでの範囲でのアクセスを許すかが悩みどころ。しかし、当社は『サイバートラスト デバイスID』を導入しているので、思い切って社員に幅広く社内システムにアクセスすることを認めて、効率よく仕事ができる環境をつくることができた」と話し、導入してすぐにメリットを実感したようである。(ゼンフ ミシャ)
3つのpoint
・最新の端末を安全に業務に活用できる
・Windows PCを含め、マルチOSに対応している
・短い期間でAndroid 3.0対応の要望に応じた