小売業のトライアルカンパニーは、DWH/BIソフトの「EMC Greenplum Database」を導入して、データ分析を生かしたビジネスを手がけることによって、順調に業績を伸ばしている。IT化に積極的で、現場が使いやすいシステムの構築を追求。業務効率化と成長戦略で、将来は海外での出店を視野に入れるなど、さらに事業領域を拡大しようとしている。
トライアルカンパニー
会社概要:1974年創業の総合小売業で、郊外型のGMSをはじめ、スーパーやドラッグストア、ディスカウントコンビニエンスストアなどを運営。九州を中心に140店舗以上を構えている。
プロダクト提供会社:EMCジャパン
プロダクト名:EMC Greenplum Database
トライアルカンパニーのDWHのシステム構成
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| 西川晋二CIO |
トライアルカンパニーは、食品や日用雑貨、衣料品、家電製品などを販売する「スーパーセンター」を柱として堅調に業績を伸ばしており、昨年度(2011年3月期)の売上高は前年度比13.7%増の2384億円。今年度も増収増益を見込む。
同社が成長している要因として、「エブリデー・ロー・プライス(ELP)」をモットーに日々の暮らしに欠かせない商品をいつでも低価格で販売し、リピーターが多いことが挙げられる。ポイントカードの利用率は7割を超える。消費者に認められていることが一番の好調要因だが、IT化に積極的であることも成長を後押ししている。
IT化への取り組みについて、取締役の西川晋二CIOは「競争が厳しいなか、コスト削減のための業務効率化はもちろん、売り上げを伸ばしていくための策を講じていけるシステムでなければならない。グローバルであたりまえになっているIT化は必須」とみている。販売データなど、日々収集するデータを最大限に活用して次の戦略に結びつける目的からも、DWH(データウェアハウス)を生かしたデータ分析を目指して、「EMC Greenplum Database」を導入することにした。
導入に際しては、EMCの製品だけでなく、複数の製品を候補に挙げていたようだ。最終的にEMCの製品を選んだのは、「社内のリソースで簡単に分析できることが前提だった。しかも、当社が望んでいた水準以上にデータを有効活用できることがわかったからだ」と説明する。販売データや在庫データを分析することが主な目的だったが、それだけでなくポイントカードの顧客情報からドミナント戦略(特定地域への集中出店で優位に立つ戦略)を立てることができると判断した。昨年4月に「EMC Greenplum Database」を導入し、日々の販売・在庫データを使って仕入れや店舗の出荷をタイムリーに実行することはもちろん、迅速に出店する店舗戦略にも役立っているという。一昨年度末の時点で107店舗だったのが、昨年度末の時点で131店舗、現在は140店舗を超えている。今後は、全国での出店を進めるほか、韓国や中国への進出も視野に入れており、今後5年間で800店舗を目指している。
西川CIOは、「経営に生かすシステムに加えて、現場と直結したシステムをつくることが業務効率化や売上拡大には重要な要素となる」という。そんなシステムを構築するために、「メーカーの製品を導入するだけでなく、自社で開発することも重要となる」としている。日本で90人、中国で400~500人の技術者を擁しており、現場が使いやすいシステム開発を追求。例を挙げれば、DWHシステムの刷新に伴って、Androidベースの携帯端末「PACER」を独自開発した。その端末は、スマートフォンのように通話や業務に関する情報収集ができるだけでなく、バーコードスキャナモジュールを取り付けてハンディターミナルの役割も果たす。経営側からしてみれば、現場に有益な情報を提供しながら現場の情報を収集し、次の戦略を立てることができるわけだ。
西川CIOは、「現場ありきのIT化が会社を成長に導くカギ」としている。誰のためにシステムを刷新するのかを見極めているからこそ、競争が厳しい小売業界で順調に成長し続けているのだろう。今後は、データをより詳細に分析できるように基幹システムの刷新も検討している。メーカー製品の採用と独自開発で、使いやすいシステムの構築を目指す。(佐相彰彦)
3つのpoint
・社内データの有効活用を事業拡大につなげる
・タイムリーな販売とドミナントを実現
・メーカー製品と独自開発でシステムを構築