日商エレクトロニクス(日商エレ、瓦谷晋一社長CEO)は、企業向けオンラインストレージサービスの分野で、専業ベンダーである米Oxygen Cloud(オキシジェンクラウド)と提携。このほど、パソコンやスマートフォンなど、マルチデバイス対応の企業向けオンラインストレージサービス「Oxygen Cloud」の国内販売を開始した。このサービスをソリューションに組み込んで展開するパートナーと連携アプリケーションを開発するパートナーを募り、中核事業として「Oxygen Cloud」事業の拡大を目指す。(取材・文●谷畑良胤/ゼンフ ミシャ)
Evernoteなどは危険
安全にストレージ利用へ
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Oxygen Cloud バイスプレジデント アレックス・トゥ氏 |
「Oxygen Cloud」は、企業利用に最適化したオンラインストレージサービスで、WindowsやMacのパソコンに限らず、iPhone/iPadやAndroidなど、すべてのモバイルデバイスに対応している。ファイル共有やファイル転送などの機能を備え、ファイルの暗号化と通信の暗号化によって、データを安全に処理することができる。また、ユーザーごとのアクセス可否を設定したり、フォルダーへのアクセス制限を付与したりできる。ユーザー企業は、重要なデータをセキュアに管理・運用することができるようになる。
サービスメニューとしては、パブリッククラウド型の無料版「Free Grid」(容量5GB)と有料版「Team Grid」(100GB)に加え、パブリッククラウドのストレージを企業保有のオンプレミス型ストレージと接続してデータの保存先を選ぶことができる「Enterprise Grid」を用意する。「Enterprise Grid」は、オンプレミス型ストレージとの連携によって、データの重要度によって保存先を分け、機密情報を企業内システムで保存する方式でセキュリティを確保している。パブリッククラウド、オンプレミス、企業システムを預けるデータセンターのどのストレージ環境でも使えるのが特徴だ。
Oxygen Cloud社の米国本社でバイスプレジデント(VP)を務めるアレックス・トゥ氏は、「最近、個人向けのオンラインストレージサービスを使う社員が増えている。しかし、個人向けサービスでは、重要なデータを安全に保存することができておらず、情報漏えいのリスクは高い」と、EvernoteやDropboxなど、ビジネスパーソンの多くが利用するツールの使い方に警鐘を鳴らす。そして、「だからこそ、セキュリティを重視した『Oxygen Cloud』を開発し、iPhoneなどのデバイスを活用しながら、オンプレミス型ストレージとの連携によって、重要な情報を自社のコントロール下に置く環境を実現した」と説明する。
Oxygen Cloud社は、このサービスを2011年5月に米国で発売。金融や医療などの業種をはじめ、現時点で約8000社のユーザー企業が使っているという。ソニーの米国法人や、大手システムインテグレータ(SIer)の米ユニシスなども、「Oxygen Cloud」を導入している。日本では日商エレが「Oxygen Cloud」の販売と日本語によるサポートを手がけている。Oxygen Cloud社は日商エレとのパートナーシップを通じて、日本市場の開拓を図るだけではなく、日商エレが昨年8月に現地法人を設立したベトナムなど、アジア諸国での展開にも挑む方針だ。
SIerとISVなどに向けてパートナー制度を展開
日商エレは、「Oxygen Cloud」の拡販に向け、二つのパートナープログラムを用意している。一つは「ソリューションパートナー(VAR)」という制度で、スマートデバイスや仮想デスクトップ(VDI)、ファイルサーバー、ストレージなどの販売力と技術力をもつSIerやサービスプロバイダなどが対象。SIerなどは、既存のオンプレミスのITシステムと一緒にこのクラウドサービスと連携して販売できるプレーヤーを募る。SIerのほか、データセンター事業者などを想定している。もう一つが「アプリケーションパートナー(ISV)」で、このクラウドサービスと連携するアプリケーションやサービス、製品を同社が提供するAPIやSDK(開発キット)で開発し、提供するソフトウェアベンダーなどを集める。紙文書をスキャナで電子化するソリューションをもつベンダーなどが対象だ。
ソリューションパートナーは、スマートデバイスやストレージ、アプリケーションなどをOxygen Cloudと組み合わせ提供できる。Oxygen Cloudとの協業によりビジネス拡大と収益向上につながる機会を創出できるという。
企業に働くビジネスパーソンの多くが、Evernoteなどパブリッククラウドのストレージサービスを使っている。しかし、機密データなどを外部に出すことによる危険性を危惧する企業は多い。「Oxygen Cloud」は、どこにデータを置いても安全にデータを取り扱うことができるので、多くの企業が望んでいたサービスといえる。日商エレにとっては、既存の主力ビジネスのストレージなど、ネットワーク向け事業を生かしつつクラウドへ歩を進めることができる一挙両得の新しいビジネスモデルを構築することができそうだ。