コンピュータには欠かすことができないプロセッサ(演算装置)。その最大手であるインテル(吉田和正代表取締役)との連携は、ハードメーカーにとって最重要のポイントとなる。インテルの戦略はサーバー市場を知るうえで大切な要素となる。今年3月と5月に発表した新プロセッサの主な特徴を、インテルの福原由紀・クラウド・コンピューティング事業本部データセンター事業開発部部長にうかがった。(聞き手/木村剛士)
消費電力削減に役立つ新製品
──今年3月と5月に「インテル Xeon プロセッサー」の新製品を発表されました。サーバーメーカー、そしてユーザー企業の反応は、いかがですか。  |
| 福原由紀 部長 |
福原 3月に「E5-2600」と「E5-1600」、5月には「E3-1200 v2」と「E5-2400」、「E5-4600」を発表しました。新ファミリーでは、「運用の手間軽減」「電力効率のアップ」「強固なセキュリティ」にこだわりました。この三点は、世界各国のユーザーの要望が多かった項目で、とくに日本のユーザーからは強く求められていたので、満足していただいていると感じています。
──日本のユーザー企業は、節電(電力効率の向上)に対する意識が高いはずです。消費電力を抑えるための技術には、とくにこだわったのでは?
福原 インテルの新プロセッサは、前世代の製品に比べて、すべて消費電力を抑えています。今回も例外ではなく、製品によっては消費電力を80%も削減することができています。ただ、プロセッサ自体を低消費電力化するだけでなく、消費電力を可視化して電力量を抑える技術・ツールもインテルはもっています。「インテル インテリジェント・パワー・ノード・マネージャー(ノード・マネージャー)」をご存じでしょうか? あまり馴染みがないかもしれませんが、プロセッサに組み込んでいるエンジンのことで、管理ツールを使ってサーバーの消費電力量をリアルタイムに把握することができます。ユーザーが消費電力の上限値を決めて、その値以上は電力を使えないように設定することも可能です。
──ユーザーは、1台だけでなく、複数のサーバーの消費電力をまとめて管理したいと思うはずですが……。
福原 そのニーズには、「インテル データセンター・マネージャー(DCM)」というツールで応えます。ラックやフロアごとなど、複数のサーバーを一括管理することができます。
──同様の機能をもつ運用管理ソフトとの差異化ポイントは、何ですか。
福原 われわれのツールは、ベンダーやシステムを選びません。インテルのプロセッサが搭載されているサーバーであれば、すべて管理することができます。また、他社の運用管理ソフトと連携することが容易です。ソフトメーカーは、自社の運用管理ソフトのなかに、「ノード・マネージャー」や「DCM」を組み込むことができます。ですから、インテルは、運用管理ソフトメーカーの皆さんのライバルではなく、パートナーなのです。
DC向けサーバーの開発に注力
──インテルは、多くのサーバーメーカーと協業しているので、メーカーの戦略をかなり知っていると思います。業界の動きをどのように捉えていますか。
福原 メーカーは、クラウドシステムやデータセンター(DC)で使うサーバーの開発にかなり力を入れています。インテルも同じように強化しており、私が所属する「クラウド・コンピューティング事業本部データセンター事業開発部」という部門を設置していることが、その証です。2011年に立ち上げた組織で、DCで使うコンピュータにはどのようなプロセッサが求められているかを調べ、それを製品開発に生かしています。DCに適したサーバーは、今後市場全体をけん引する役割を担うでしょうから、インテルも当然、強化分野の一つに置いているのです。
──DC事業者の要望は、日本と海外で違いはありますか。
福原 日本は、よその国よりも土地代と電気料金が高額ですので、コストに対する意識が高いようです。
──DC向けサーバー市場を盛り上げるために、取り組んでいる活動は?
福原 一例を挙げれば、「Open Data Center Alliance」という団体の運営があります。インテルと、世界の大手ユーザー企業のITマネージャーが集まって組織した任意団体で、DCが直面する課題を解決するソリューション要件を定義する活動などを行っています。これらをサーバーメーカーにフィードバックすることで、ITベンダーのDCビジネスに貢献しようと考えています。
Strategic Model 今年3月に発表した「インテル Xeon プロセッサー E5ファミリー」。前世代の製品よりも処理性能を向上させながら消費電力を抑えている