ITホールディングス(ITHD)グループのTISは、アリエル・ネットワークが開発した情報共有アプリケーションプラットフォーム「アリエル・エンタープライズ」を採用した。2011年4月に旧TISと旧ソラン、旧ユーフィットの3社が合併し、新生TISが発足したタイミングで、情報共有システムの刷新を検討。一度は旧TISが使っていたIBMのLotus Notesに片寄せしたが、11年6月に「アリエル・エンタープライズ」への移行を決定。ITHDグループのネオアクシスが主にシステム構築を担当した。
TIS
会社概要:TISはITホールディングス(ITHD)グループの中核事業会社の1社である。旧3社と合併し、存在感をより高めた。もう一翼を担う中核事業会社のインテックとの再編も視野に入れ、グループ体制の見直しを進めている。
ソフトウェア提供会社:アリエル・ネットワーク
ソフトプロダクト名:アリエル・エンタープライズ
アリエル・エンタープライズを活用したTIS情報共有基盤の概要

写真左からネオアクシスの木坂嘉雄・ナレッジソリューション部長、アリエル・ネットワークの斉藤元紀・販売推進グループリーダー、ネオアクシスの松田秀仁IT基盤サービス部主査
情報共有プラットフォームは、旧TISと旧ユーフィットがLotus Notes、旧ソランは自らつくり込んだものを使っていた。情報共有プラットフォームとは、グループウェアやスケジュール共有、申請ワークフロー、会議室予約、社内掲示板などの一連のアプリケーション基盤のことだ。ここで取り上げるのは、旧3社が運用してきたシステムから、新TISが採用した新しい情報共有プラットフォーム「アリエル・エンタープライズ」へと移行した事例である。
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TISの橘浩則 情報システム部担当部長 |
Notesユーザーの多くは、「エンドユーザーコンピューティング」が流行したクライアント/サーバー時代に、自らの業務に最適化したアプリケーションをつくってきた経緯がある。TISでも個別アプリの数が実に数千種類に達し、旧TISと旧ユーフィットが同じNotes基盤を使っているとはいえ、「個別開発の経緯からして、中身はまるで別モノ」(TISの橘浩則・情報システム部担当部長)だった。そこで、旧3社のアプリを統合するプラットフォームの「アリエル・エンタープライズ」では、統合開発・運用体制へと舵を切っていった。
「アリエル・エンタープライズ」は、アリエル・ネットワークの創業者がNotesの開発に従事した知見をベースに、「新しい情報共有プラットフォームのあり方を追求するかたちでできあがった製品」であると、アリエル・ネットワークの斉藤元紀・販売推進グループリーダーは説明する。TISが採用を決めた背景には、まずJavaでつくられたオープンなプラットフォームであることと、既存資産であるNotesからの移行親和性の高さ、さらにITHDグループや協力会社など社内外との情報共有が容易であることの三つが決め手となっている。
2012年1月、ITHDは東京本社を日比谷から西新宿へ移転するのに伴い、TISを含むグループ8社の東京地区の事業拠点を集約した。アリエル・エンタープライズの採用を決めたのは、これに先立つ11年6月だった。また、数千種類のアプリを1割程度に統廃合する基本方針がかたちになりはじめたのは、11年8~9月頃のことだ。「西新宿への移転時には、少なくとも会議室予約などは稼働させなければならない状況で、残り時間は限られていた」と、システム構築を担当したネオアクシスの木坂嘉雄・ナレッジソリューション部長は話す。
かつての情報共有プラットフォームでは、ごくあたりまえに担当部門ごとのアプリを運用していたが、このエンドユーザーコンピューティング方式からの転換を決めたのは、実はアリエル・エンタープライズの採用が決まった後のこと。Notesからの移行親和性が高いとはいえ、「そのまま移行できるわけではない」(ネオアクシスの松田秀仁IT基盤サービス部主査)という実情と、ITガバナンスの観点からも統合運用が必要だと判断した。
結果として、西新宿への移転前には、アプリケーションを統廃合するかたちで基本部分での本稼働にこぎ着けた。今年3月にはスマートフォンからの利用もスタートし、今後も必要なアプリを選択しながら完成度を高めていく方針だ。(安藤章司)
3つのpoint
・情報共有アプリケーションを見直しと統廃合を進める
・アプリケーションプラットフォーム活用で迅速に移行
・エンドユーザーコンピューティングからの転換を決意