半導体商社として半世紀にわたって事業を展開してきた菱洋エレクトロ(小川賢八郎社長)は、半導体とシステム情報機器を軸にして、両方から派生する「サービス・ソリューション」の拡大を本格化している。3年ほど前からは、得意とするハードウェアの組み込み機器などを利用し、医療や省エネ、デジタルサイネージなどの重点ソリューションの販売を手がけており、これが成長軌道に乗り始めている。今年度(2014年1月期)からは、中国最大手のITディストリビュータの神州数碼控股(デジタルチャイナ、郭為主席兼執行董事)と業務提携し、これらを国内だけでなく、中国・ASEANなど「大中華圏」へと拡大する。同社は今後5か年で、新規事業分野で売上高の30%の獲得を目指す。(取材・文/谷畑良胤)
サイネージ、医療などで実績拡大
 |
| 小川賢八郎 社長 |
菱洋エレクトロは、半導体製品を扱う専門商社として1961年に誕生し、半世紀以上にわたって半導体の販売と半導体を組み込んだシステム情報機器の販売を事業の両輪として事業を拡大してきた。しかし、小川社長は、国内電気産業などの落ち込みを目の当たりにして、「半導体産業は危機に陥っている」と判断し、「エレクトロニクスの垣根を越えた『トータルサービスカンパニー』」を目指すことを決めた。
3年ほど前には、新しい領域を開拓するプロジェクトチームを立ち上げ、半導体の成長が望めなくても収益を上げる体質を構築するために、新サービスの事業化と海外ビジネスの強化に力を入れて取り組んできた。小川社長は今年度(2013年1月期)を「新しい1年目」と位置づけ、他社とのアライアンスや協業を強化しつつ、これまで構築してきた新規事業の販売を加速する方針だ。
プロジェクトチームでは、半導体とシステム情報機器の事業を軸に、その事業から派生する「サービス・ソリューション」の構築を進めてきた。現在では、デジタルサイネージ、セキュリティ、医療・ヘルスケア・介護、省エネ・エコの4分野をフォーカス領域として、クラウドやセンサーネットワークなどの最新技術を融合した複数の「サービス・ソリューション」が立ち上がっている。
例えば、医療分野では、2010年に構築を開始し、増え続ける医用画像データの保管コスト削減や管理の煩雑さを解消する「医用画像外部保管センター(SSM=Storage Service Center for Medical Information Alliances)」が、いくつかの医療機関で受注案件が生まれている。省エネ・エコの領域では、「ハイブリッドLED(発光ダイオード)照明システム」が東日本大震災以降、ユーザー企業の環境配慮意識の高まりにつれて伸び始めた。この照明システムは、スーパーリフレクター(特殊反射板)を使い、天井や灯具に当たるムダな光をLED専用反射板で集光し、光のロスを最小限にする仕組みだ。
また、「Let's Touch」というインタラクティブ機能を備えたタッチ式のデジタルサイネージを開発し、結婚式場などへの販売を積極化している。そのほか、社内の端末のシンクライアント化などでIT資産を最適化した自社導入をソリューション化した「トータル・プライベートクラウド」なども構築してきた。小川社長は「従来はモノを売ってきたが、これからはコトを売る」と、事業体の変革を全社に促している。
中期的に海外比率を30%へ
一方、新規事業の拡大を加速するために、自社の既存海外拠点を生かした海外ビジネス展開を進めている。
今年6月には、日本と中国でIT製品の販売を手がけるキング・テック(王遠耀社長)とデジタルチャイナの3社間で包括的業務提携を交わし、日系商社と中国有力ITサービス企業が連携して大中華圏市場への拡販を推進することで合意した。キング・テックは菱洋エレクトロ、デジタルチャイナとそれぞれ資本・業務提携関係にあったが、キング・テックの仲介で提携関係を3社に拡大した。
菱洋エレクトロはデジタルチャイナからIT商材を調達し、中国内の日系企業などへ販売する。また、菱洋エレクトロの新規事業で開発したソリューションをデジタルチャイナのユーザーに展開する。これに加えて、「アジア地域にある自社の8拠点で、日系企業などへ『サービス・ソリューション』を提供する」(小川社長)ことを目指して、各拠点の技術と営業推進部隊を増員している。中期的には、アジア地域を中心に海外売上高比率を30%に引き上げることを計画している。
国内半導体産業が苦境にあるなかで、半導体に関連する商社の変革が求められている。菱洋エレクトロの事業改革は、その一つの指標になる。