京セラ コミュニケーションシステム(KCCS)で、エンタープライズ営業課の課長を務める萩元大作さん。入社2年目に社内の「ベストセールスマン賞」の新人賞を受賞したが、入社7年目、仕事に行き詰まりを感じて、会社を辞めようとまで思い詰めた。だが、上司の励ましを受けて、考え直した。以後、自分一人の力で大口の受注を獲得しようと決心し、提案活動に没頭する。成果は、大手不動産会社からの大口受注となって現れた。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/大星直輝)
社内の人脈づくりを大切に
ある大手不動産会社から注文をいただいたとき、これまで経験したことがないほどの達成感を覚えた。「今度こそ、自分が単独で開拓したお客様だ」と、しみじみ思った。これまでと違い、既存顧客の担当を引き継いでの販売実績ではない。まったくつき合いのなかった企業から、大型案件を引っ張ってきたのだ。入社9年目のこの経験は、自分にとっての大きなターニングポイントになった。これまでずっと感じていた行き詰まり感が吹っ飛び、仕事に励むエネルギーが湧いてきた。
その大手不動産会社は、システムのリプレースを計画しておられたので、私は、新しいシステムを当社のデータセンターで構築する提案を行った。商談の最初の段階から当社の事業部長や役員を巻き込んで、データセンターを利用することのメリットをお客様にアピールした。契約に至るまでには6か月を要した。無我夢中で商談にのめり込んだので、まったく苦痛には感じなかった。そして、最終的に受注したのはインフラ構築からネットワーク構築、さらに運用アウトソーシングまでのフルメニューだった。
受注の瞬間、私一人が喜んだだけではない。会社も、案件のボリュームの大きさに大喜びだった。その年、私は「ベストセールスマン賞」の最優秀賞をもらった。
前号で述べたように、入社2年目には新人賞も受賞した。しかし、新人賞は、お客様を引き継いで、先輩のサポートを受けながらのものだった。それと比べれば、今回の最優秀賞は価値がまったく違う。自分が単独でゼロからお客様を開拓した努力を評価してもらったものだ。本当にうれしかった。
営業のコツをいえば、私は必ず社内のキーパーソンを商談に巻き込む手法をとる。これはとても重要なことだと考えている。自分の会社の事業部長や役員を巻き込めば、提案がスピーディに進み、お客様にも「大切にされている」と感じていただける。私は、役員たちと飲みに行ったりして、日頃から社内の上層部とのパイプを太くしている。つまり、ビジネスに生かす社内の人脈を築くことを心がけている。
もう一ついえば、仕事を効率よくこなすために、スケジュールの組み方にこだわっている。当社は、社内向けの資料を作成する事務系の仕事が多い。だから、午前中は基本的には訪問予定を入れず、資料づくりに集中する時間をつくる。お客様を回るのは、午後。商談の後に会食があったり、外出先から直帰するケースが少なくないので、事務処理は午前中に片づける。
最後に、将来の構想に触れておきたい。地味といわれるかもしれないが、データセンター事業をさらに伸ばすことだ。トップ営業として、いろいろな新しいサービスを中心となって開発していきたい。
●日常使う営業ツール.......... 萩元さんが会社案内やサービスの説明に使っているのは、iPad。「まだ珍しさがあって、話のきっかけになる」という。ただし、スケジュール管理に関しては、アナログ派だそうだ。「手帳の左頁にスケジュールを記入し、右頁にはタスクを書き込む。その日にこなすべきことだけではなく、中期の課題も忘れないようにしている」と語る。
●上司からのひと言.......... 「萩元くんとは、2011年から一緒に仕事をしている。日ごろの活動では、用意周到に準備を行い、ロジカルに仕事を進めている。また、一緒に仕事する仲間への気配りを怠らず、彼の周りに人が集まってくる中心的な存在だ。私としても、安心して仕事を任せることができる。萩元くんには、エンタープライズサービス営業課の課長として、常に上のステージを目指してもらいたい」(ソリューション営業2部の横山彰則部長)