京セラグループの中核SIerである京セラコミュニケーションシステム(KCCS)は、年商1500億円に到達する成長を視野に入れて、注力事業の拡充を進めている。とりわけアジアの成長市場を中心とするグローバルビジネスの立ち上げは急務。ERP(統合基幹業務システム)やクラウドなどを軸にして、さらにKCCSの主要事業セグメントである情報サービスと経営コンサルティング、通信エンジニアリングの連携をより密接にするとともに、京セラグループとの相乗効果も一段と高めていく。佐々木節夫社長は、「変革と挑戦を通じてビジネス拡大を推し進める」と意気込む。
「変革と挑戦」で年商1500億円を視野に
──昨年度(2012年3月期)に年商1000億円を超え、名実ともに大手SIerの一角を占めるようになりましたが、この後の展開についてはどのように考えておられますか。
佐々木 次の目標は、切りのいい1500億円をイメージしています。しかし、まずは“1000億円プレーヤー”という新しいステージに到達したわけですから、「変革と挑戦」をキーワードにこれまでとは違う取り組みでビジネスを伸ばします。昨年度に大台の目標を達成したものの“勝って兜の緒を締めよ”ではないですが、やはり気持ちを引き締める必要があるからです。
──具体的には、どのような「変革と挑戦」を実行していくお考えですか。
佐々木 まずは、国内外のライバル他社との差異化、京セラグループである当社ならではの強みや優位性を一段と強く打ち出さなければなりません。グローバル市場を見渡すと、情報・通信市場は拡大基調にあって、スマートデバイスやクラウドサービスが企業だけでなく、個人や家庭の隅々まで浸透しています。さらに技術革新を伴いつつ、新しいデバイスやサービスをつくりだす好循環は目をみはるばかりです。
ただ、こうしたICTの発展の環のなかに、いったいどれだけ日本のICTベンダーが主体的に関わり、イニシアチブをとっているのかと問えば、近年ではとくに疑問に感じる局面が増えているように思います。これはわれわれの属する情報サービス業界でも同じことで、世界的規模でICT市場が伸びていても、当社を含む日本のベンダーが活躍できるかどうかは、また別問題ということです。裏を返せば、好循環の環のなかに入り込んで、存在感を示すことができれば、大いに伸びる余地があるということでもあります。
──グローバル化が著しいICTで、国内主体のビジネス形態は維持できないという見方があります。
佐々木 当社のグローバル進出は前任社長の小林(元夫・現会長)の時代から本格的に進めてきました。ICTそのもののグローバル化だけでなく、近年ではユーザー企業がアジアの成長市場を中心に進出を活発化させている。中堅・中小クラスのユーザー企業も果敢にグローバル対応を進めているのです。
この背景には、市場の構造が地産地消型へと大きく変わっていることがあります。つまり、アジアでつくってアジアで売るというモデルが主流になり、従来のアジアでつくって日欧米で売るというモデルだけではなくなっている。製造・流通サービスなど産業分野のユーザーのビジネス形態が変わるなかで、当社はICTの領域でユーザーの役に立たなければならず、新しい動きに適応していくいくつかの方法の具体化に向けて検討や準備を進めているところです。日本の情報サービス産業の一翼を担う大手SIerに成長してきたわけですから、産業の発展を担うという使命感をもって臨んでいきたいと思っています。
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